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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
そうだ。
兄の言う通りだ。
不安ならば、もっと愛し合えばいい。
怯えも恐怖も不安も消し去る事が出来ないのであれば、それを上回る幸福を感じていれば、それで良いではないか。
「………………」
ヴィヴィは細めていた瞳を見開き、クローゼットの中を見渡し。
そして見つけた自分の分身――2つ前のシーズンのFP『眠れる森の美女』の衣装を着せた、ウサギの縫いぐるみ。
それを胸に抱き込んだヴィヴィは、小さな声で懇願する。
「ウサギさん……。ヴィヴィの不安、貰って? お願い……っ」
自分の負の感情の憑代としてしまった事に若干の後ろめたさはあるが、それで幾分、ヴィヴィの心は晴れた。
「……ヴィクトリア……? 入っていいか……?」
うんともすんとも寄越さない妹が、心配になったのだろう。
匠海のその問いに、ヴィヴィは縫いぐるみを元の場所へと戻し、クローゼットの扉を開いた。
「ヴィクトリア……。どうかしたか?」
茶色のバスローブに身を包んだ匠海のその表情は、とても心配そうなもので。
「ううん。恥ずかしかった、だけ……」
そう呟いたヴィヴィは、今の自分のあられもない姿を思い出し、兄の胸の中に飛び込んだ。
「本当に? 嫌だったら、脱いでもいいぞ?」
抱き留めてくれた匠海は、まだ心配そうにそう囁いてきて。
「…………、脱いでもいいのっ!?」
嬉々とした表情でぱっと兄を振り仰いだヴィヴィに、匠海の心配気な表情が徐々に悪いものへと変わっていく。
「間違えた。俺が脱がせてあげる――の、言い間違えだった」
「~~~っ!? もうっ」
にやりと嗤った匠海に、ヴィヴィはそう零すと可愛らしく唇を尖らせた。
「ほら7日ぶりのヴィクトリアの顔、ゆっくり見たいから、ベッドに行こうね」
「は~~い」
兄に抱かれてベッドに行けば、もうそこには不安など無かった。
妹の特等席――兄の股の間に横抱きにされたヴィヴィを、匠海はうっとりと見下ろしながら、その細い躰を撫で擦り、大きな掌の中で可愛がり、玩んで。
「……はぅ……っ み、見ちゃ、だめぇ~~っ」