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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

 5月6日(木)。

 東大に入学してから3週間を過ぎた頃。

 双子は大学生活にも、ようやく慣れてきていた。

 クリスと円は同じサークル “東京大学法律勉強会” (略して “ほうべん”)に入った。

 ほうべんとは、法曹界、官界、政界、金融界、実業界、メディアをはじめ、様々な分野の第一線で活躍している方々を訪問する、インカレサークル。

 もちろんヴィヴィも、2人から熱心に誘われたのだが、

『ん~~……。興味はあるんだけど、ちょっと、他の事に時間、使うかも知れなくて……』

 そう言葉を濁し。

 結局、ヴィヴィは強制的に入部する形となった “東大スケート部” 以外には所属していなかった。

 2時限目の中国語一列を終えた双子は友人達と、円をはじめとするクラスメイトと待ち合わせをしている場所へと向かった。

 東京のど真ん中とは思えない程緑に囲まれた駒場キャンパスは、ところどころにベンチがあり、そして敷地内を東西に横断する銀杏並木が有名だ。

 その左端にあるのが、双子がたまり場にしている “駒場コミュニケーション・プラザ”。

 3棟ある建物は、1階には生協購買部・書籍部、カフェテリア若葉、2階にはダイニング銀杏、多目的教室、音楽実習室等があったりする。

 双子以外の友人達はそれぞれランチを調達し、銀杏が生える芝生の一角を陣取っていた。

「おっ お疲れ~。今日は遅かったね?」

 真行寺 円がサンドウィッチを頬張りながら、双子を見比べる。

 ちなみに学内は常に英語が公用語なので、休憩時間でも皆が英語を使っていた。

「うん。ブリちゃんが、教授を質問攻めにしてたからね」

 ヴィヴィがそう言ってニヤッと笑って見せたのは、ブリジット=ルロワ(通称:ブリちゃん)、フランスからの留学生。

 高い鼻の周りのそばかすと、くりんくりんの巻き毛がチャームポイント。

「塩川君と三宅君は、鐘が鳴ると同時に飛び出してったけどね?」

 ブリちゃんの冷やかしに、名指しされた2人は肩を竦めてみせる。

「中国語 聞いとったら、腹減った……」

 メガネで関西弁なのが塩川で、にかっとあけっぴろげな笑顔を浮かべる巨人が三宅だ。

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