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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「あれ……? 丸尾は……?」
クリスが塩川の隣に腰を下ろしながら、そう尋ねる。
「ロッカーにカップ麺、取りに行った」
三宅のその返事に、クリスが「また……?」と眉を潜める。
「しょうがなかやん。金欠なんやし」
そうクリスに間延びした声を掛けるのは、いつもカップ麺を食べている丸尾だ。
ヴィヴィは円の隣に腰を下ろすと、料理長が持たせてくれたランチボックスを開く。
「丸尾君、昨日も深夜までバイト? 1時限、まるまる寝てたよね?」
フォーク片手にそう突っ込むヴィヴィに、丸尾が「あ、バレとう?」とへらっと笑う。
大体このメンバーと共に、双子は休憩時間を過ごしていた。
6名しかいないクラスの女子の残り3名と、クリスの友人の男子4名が、履修科目の関係等で入れ代わり立ち代わりするが。
大塚薬品工業の栄養士がカロリーコントロールしてくれたチキンを頬張っていると、円がふと思い出したように口を開く。
「そういえば、ヴィヴィ。今シーズンのエキシビ、何すんの?」
「ん? マドカ、興味あるの?」
円はそんなにフィギュアに詳しくなく、興味も無さそうなのだが。
「お兄ちゃんが、ね」
ただその兄の太一は、フィギュア大好き人間なのだった。
きっと家で、太一に尋ねられたのだろう。
「あははっ んっとね~。『What a Wonderful World』だよ」
「へえ? どっちの?」
そう尋ねてきたのは、塩川。
彼は吹奏楽部に所属しているので、音楽に関しては造詣が深い。
「ルイ=アームストロング、のほう」
「へ~、俺、あっちかと思うた」
眼鏡をずり上げながら呟く塩川に、円が「あっちって?」と尋ねる。
「サム=クックの『Wonderful World』。どっちも有名やで?」
「ん……? どんなのだったっけ?」
男子メンバーが揃って首を捻る中、ブリちゃんが「はいはいっ!」と片手を挙げ、サム=クックの『Wonderful World』を口ずさみ始める。