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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「えっと、
♪ 歴史の事なんか よく知らない
生物学なんか よく知らない
科学の本の事なんか よく知らない
専攻したフランス語の事なんか よく知らない
でも、君を愛している事は 知ってるさ
君も僕を愛しているなら
どんなに素敵な世界になるだろう ♪」
両手で指を打ち鳴らしながらノリノリで歌うブリちゃんに、円が最近茶色くした髪をなびかせながら、腹を抱えて笑う。
「あははっ 東大生にあるまじき歌詞、だね?」
「♪ 地理の事なんか よく知らない
三角法なんか よく知らない
代数学の事なんか よく知らない
計算尺を何に使うのかも知らない
でも、1+1が2だって事は知ってるさ
その1が君だったなら
どんなに素敵な世界になるだろう ♪」
続けて歌うブリちゃんとヴィヴィに、皆が途端に笑顔で突っ込む。
「そいつ、じゃあ、何知ってんだよ?」
「だから、足し算は解るんじゃない?」
「小学生かっ」
東大生ならではのブラックジョークを交えながら、50分の短いランチタイムを終えたクラスメイト達は、必修科目の講義の為、講義室へと移動したのだった。
4時限目で受講を終えた双子は、図書館で1時間勉強すると、揃って高田馬場へと向かった。
シチズン・スケートリンク。
そう、双子が所属している筈、のスケート部の練習場所だ。
入学したその週には、スポンサーのCM撮り。
翌週は、アイスショー。
その翌週は、GWでアメリカへ振付に旅立ち。
異常に忙しかった双子は、入学して一度もスケート部に顔を出せていなかった。
テニススクール、ボウリング場、ゴルフスクールを兼ね備えた複合施設の1階に、リンクがあった。
事前に主将の3年生には連絡をしておいたのだが、18:00~20:00の練習時間の30分前に現れた双子に、総勢17名のメンバーは色めき立っていた。
「初めまして、篠宮 クリスです。こっちは、妹の……」
「し、篠宮 ヴィクトリア、です。 “ヴィヴィ” って呼んで下さい」
緊張気味の双子に対し、主将の蟹江は顔を綻ばせた。
「やあやあ、やっと直接会う事が出来た! 歓迎するよ、クリス君、ヴィクトリア君!」