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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
少し演劇じみた口調でそう歓迎してくれた蟹江に、双子はほっと息を吐いて互いの顔を見合わせた。
「遅くなって、すみませんでした。色々とスケジュールが立て込んでいて、ご挨拶に来るのが遅れてしまい……」
「ははっ 分かってるよ。ひとまず世界選手権3連覇のお祝い、を言わせておくれ。おめでとう!」
蟹江の言葉に、他のメンバーからもお祝いの言葉が掛けられた。
「東大スケート部はご覧の通り、君達を入れてもたったの19名。仲良くやって行こう!」
「「はいっ よろしくお願いします!」」
その後、皆に交じって入念にストレッチした双子は、さっそくリンクへと入った。
広さや氷の感触は、ホームリンクの松濤と大差ない。
基本は、上級生が下級生を教え指導するらしい。
2年の尾本という女子がバッジテスト7級を持っている他は、初級~3級の部員がほとんどだった。
簡単に説明すると、各級の必須エレメンツは下記の通り。
初級 : ステップ、スケーティング
1級 : 3種類の1回転ジャンプ、コンビネーション・ジャンプ、1種のスピン、ステップ
2級 : 3種類の1回転ジャンプ、コンビネーション・ジャンプ、2種のスピン、ステップ、2分間のFP
3級 : 2回転ジャンプ、アクセル、2回転+1回転のコンビネーション、3種のスピン、コンビネーション・スピン、ステップ、2分間のFP
ちなみに、双子や尾本が持っている、
7級 : 2回転アクセル、3回転ジャンプ、3回転+2回転のコンビネーション、足変えのコンビネーション・スピン等、SPとFP
と部員のレベルには明らかにばらつきがあった。
前半1時間はステップやスピンを練習していたヴィヴィは、休憩の為にリンクを降りた。
自動販売機で購入したミネラルウォーターに、大塚薬品工業から提供されている粉サプリメントを溶かし、それで喉を潤していると、2年生の尾本が声を掛けてきた。
「お疲れ~。やっぱ、2人ともスケーティング、綺麗だねぇ」
「お疲れ様です。そう、ですか? ん~~、うちはマム――コーチが、基礎に五月蠅いから」
にへらっと笑ってみせたヴィヴィに、尾本も可愛い八重歯を覗かせて笑った。