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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「今月末、 “春の関カレ”……関東学生FS選手権大会があるんだ。1年の黒川ちゃん以外は、みんな出場するんだよ」
ちなみに1年生部員は、双子の他に3級の白井君と、初心者の黒川さんがいる。
「へえ。いつですか?」
「5月29日(土)。観に来れる?」
尾本の答えに、ヴィヴィは残念そうに眉をハの字にした。
「あ~……、29日(土)~30日(日)は、2人ともアイスショーが入ってて……」
Art ON Ice というショーに出演する事が決まっており、双子はそこで今シーズンのエキシビション・ナンバーを初披露する事になっていた。
「そっか~、残念。ま、そういう事で、みんな気合入って、練習してるんだ~」
「尾本さんは、FP……4分間、滑るんですか?」
ヴィヴィがそう尋ねると、尾本は大きく首を振って頷いた。
「うんっ 実は今から音掛けするんだっ ヴィヴィちゃん、見てくれない?」
「え? あ、はい。っていうか、ヴィヴィ、でいいです」
尾本は「じゃあ、ヴィヴィ。気づいた事あったら、ガンガン指摘してね?」と言い残し、リンクへと入って行ったのだった。
その後、アドバイスをしたり、自分もルッツとフリップのジャンプを1回転から順にコツコツ踏切を確認していると、終了時間になった。
現実的に考えて、月・木の両方とも部練に出るのは無理な双子は、今後は木曜に出来る限り参加すると約束し。
そして、2年生の “新歓大臣” の福田と “新歓秘書” の田村が、
「実は双子ちゃんが練習来るまで、新入生歓迎コンパをせずに待ってたっ!!」
と主張してきたので、翌々週の5月20日(木)の部練後、コンパをする事に決定してしまった。
これから松濤のリンクへ向かい、夕食を摂ってから練習する双子は、皆に挨拶をして帰ろうとしたが、
「あ! 2人とも、これをあげよう」
部員がたむろっているロビーにいた主将の蟹江が、何やら双子に袋を手渡してきた。
「え? 開けていいんですか?」
「どうぞどうぞ」
ヴィヴィの尋ねに大げさに両腕を広げて進めてくる蟹江に、双子は袋から中身を取り出した。