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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
しばらく表裏をひっくり返しながら、熱心にカチューシャを見つめていた円だったが、
「やっぱり! ヴァン クリーフ & アーペルの “アルハンブラ” だよっ!!」
ばっと顔を上げて発した円に、ヴィヴィはこてと首を傾げる。
「なにそれ……、美味しいの?」
(クレープ……? アップル……? っていうか、そもそも、アルハンブラって、なに……?)
能天気なヴィヴィに、円が身体を小刻みに震わせながら絶句する。
「……~~っ 馬鹿っ! ハイジュエリーのブランドだっての!!」
円が指差すカチューシャの金の部分には、 “Van Cleef & Arpels” と刻印されていた。
「えっと……。それって……もしや……、お高い、感じで……?」
恐るおそる尋ねたヴィヴィに、円が呆れ果てた表情を浮かべながら喚く。
「ったりまえでしょっ!? た、たぶん……これ……」
何故かそこで言い淀んだ円は、両手をヴィヴィの耳に添え、小声で耳打ちする。
「2つで40万は、下らないかと……」
「……~~っ!?」
そのまさかの高額に、ヴィヴィは灰色の瞳を見開いて絶句した。
(え……? え……、な、なんでそんな、高価なもの……?)
「こ、この “お花ちゃん” ……。そんなに……?」
金色の縁取りがなされた、花を模した黒と白の飾りのカチューシャが、そんなに高額な物だったとは。
「お花……? 違うよこれ。 “四つ葉のクローバー” だっての」
「え……?」
円のその指摘に、てっきり花と思っていたヴィヴィは、カチューシャから視線を上げる。
「花に見えるけど、クローバーの筈だよ? ……待って……、……うん、ほら」
すぐにスマートフォンで調べてくれた円は、それをヴィヴィに渡してきた。
ヴァン クリーフ & アーペルのHPには、ヴィヴィが今 手にしているものと同じ物が、画像として映し出されており。
そして――、
『1968年に生み出されたこの “四つ葉” のモチーフは、幸運と健康、富と愛をもたらすシンボルです』
「………………」
「てか、誰に貰ったの? こんなもの」
黙りこくってしまったヴィヴィに、円がスマホをその手から取り上げながら続ける。