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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

「…………お、お兄、ちゃん」

「お、お兄ちゃん~~っ!? って……、た、匠海さんっ?」

 ヴィヴィがぼそりと零した返事に、円はえらく驚いて、けれど何とか声のトーンを落としてそう叫んだ。

「…………ん。あ、でも、誕生日プレゼントとして、だよ……?」

 GWをアメリカで過ごした双子が、振付を終えて帰宅した5月5日――匠海の誕生日。

 クリスマスに引き続き、白のベビードールを着せてきた兄が、前回の花冠の代わりに置いておいたのが、このカチューシャだった。

 金の細いカチューシャに、それぞれ黒と白の “四つ葉” の飾りが着いたシンプルな物だったので、大学にも付けて行っても構わないだろうと思ったのだが。

「はぁ~~……っ あんた、ホント愛されてんね~~、お兄ちゃんズから」

「え……? お兄ちゃんズ?」

 複数形を表すその単語に、ヴィヴィは不思議そうに聞き返す。

「クリスなんてもうヴィヴィの事、大好きじゃん? いっっっつも一緒にいるし」

 いつも――を異常に強調されたクリス本人は、今は席を外していた。

「ん~~? それは、今までそうだったからじゃない?」

 BSTで、双子は20名しかいないクラスメイト同志で、スケートも一緒で。

 隣にいるのが互いにとって当たり前だから、傍にいるだけだと思うのだが。

「…………クリス、可哀そう……」

 円が何かをぼそりと呟いたが、ヴィヴィにはその声が小さすぎて聞き取れず、

「え? 何? 聞こえなかった」

「…………なんでもないわっ」

「そ? ……でも、そんな事聞いちゃったら、着けにくくなっちゃった……」

 カチューシャを手にしゅんとした表情のヴィヴィに、

「え? なんでさ?」

 円が心底不思議そうに聞いてくる。

「だって、ガッコにそんな高価なの、着けて来れないじゃない?」

(万が一、落しちゃったりしたら……。それに、学び舎に着けてくるには、高価過ぎて不釣り合い……?)

「そう? でもきっと、私以外はそんなには気付いてないよ?」

 確かに円の言う通り、今日朝からずっと着けているが、誰にも指摘されなかった。

「そう、かな……?」

「それに、匠海さん。大学に着けて行ってるの、知ってるんでしょう?」

「あ、うん……」

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