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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「じゃあ、普段使いして欲しいんじゃない? 家に置きっぱでたまにしか使われないより、沢山使って貰った方が、贈った方は嬉しいじゃん?」
円の指摘に、ヴィヴィはすんなりと納得する。
確かに、自分が以前 葉山の別荘でプレゼントしたネクタイを、匠海がたまにしてくれているのを目にすると、ヴィヴィはいつも嬉しく感じていた。
反対に、プレゼントしたクマさんとウサギさんが、クローゼットに飾られているのは、今でも若干不服だ。
「そっか……。そうだね……」
「あ~~あ、いいなぁ、ヴィヴィは……。うちのヘタレ兄貴と替えて欲しいよ、まったくっ」
椅子の背凭れにぐったりと凭れ掛かった円は、また「あ~~あっ」とぼやく。
「え~~? 真行寺さん、凄く素敵なお兄さんじゃない?」
「ど・こ・がっ!!」
「……もしかして、おうちでは、いつもと違う感じ……?」
(う~~ん、ねじりハチマキして、肌着に腹巻して、ステテコに下駄、履いてるとか……?)
何故か頭の中で “天才バ○ボンのパパ の恰好をした太一” を思い浮かべたヴィヴィに、円は首を振る。
「え? ううん。家でもあんな感じだよ。外と変わんない」
「じゃあ、いいじゃん。優しいし博学だし、話訊くの凄く上手だし」
以前、デートをした真行寺は、スマートにエスコートしてくれたし、色々と興味をそそられる情報を与えてはヴィヴィを楽しませてくれていた。
それに “美しいもの全般が大好き” なだけあって、本人も身なりに気を配っていて。
華美でない落ち着いた上質な服のセンスもさる事ながら、本人の目鼻立ちもかなり二枚目の部類に入るほうだと思うが。
「ふんっ! ヘタレで、オタクで……。唯一、 “聞き上手” なだけじゃんっ」
何故か頑として兄を持ち上げる様な事を口にしない円に、ヴィヴィは頭にカチューシャを戻しながら窘める。
「また、そんな事言って~~」
「はい、この話はやめやめ~~っ あ~~あ、匠海さんと替えて欲しいよ、まったく……」
机に頬杖をついて不貞腐れる円に、ヴィヴィはまだ納得いかなくて。