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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「……そうか、なあ……?」
(真行寺さん……、凄く素敵な男性で、マドカの事も妹として、大事に可愛がってると思うけど……?)
そうしているとすぐに休憩時間の10分は終了し、教授が入って来た為、ヴィヴィはそれ以上話を続ける事が出来なかった。
大学から屋敷へと戻るベンツの中、ヴィヴィはiPadでカチューシャの事について調べた。
“四つ葉” の白のチャームは、マザー オブ パール(白蝶貝:真珠の母貝)。
――母性、女性らしさ、守護の象徴で、着用者に安全と健康をもたらしてくれる。
そして黒のチャームは、オニキス(黒メノウ)。
――悲観的な思考を取り除き、神秘的なインスピレーションをもたらしてくれる。
(最初見た時、繊細で洗練された印象だったけど……。お兄ちゃん、そんな素敵なもの、プレゼントしてくれてたんだ……)
なにせ、これを貰った時の匠海は、もうエロエロ街道まっしぐらで。
ヴィヴィもそこまで気が回っていなかったのだ。
「………………」
ヴィヴィはiPadを胸に抱き込むと、ふっと息を吐く。
(嬉しい……。うん、物凄く、嬉しいの……)
高価な物だからではない。
そんな事に気付かず普段使いしたくなる、気負わなくていいジュエリー。
正直、ヴィヴィは兄から貰ったひと粒ダイヤのピアスは、特別な場所へでないと気後れして身に着けられない。
そしてこのカチューシャは、身に着ける自分に対する “守護” の効能を狙って送られたもの。
ヴィヴィの薄い胸の奥が、ほんわかと温まる。
幸せ――。
幸せだ。
心底、そう思う。
大切にして貰って、妹としても恋人としても愛してくれて。
匠海はいつもヴィヴィの事ばかり心配して、ヴィヴィの事ばかり案じてくれる。
うん、本当に、本当に幸せ。
そしてこの気持ちを、兄に返したい。
匠海にも自分と居る事で、幸せを感じさせてあげたい。
そして、自分の大切な周りの皆にも――。
ヴィヴィは心の底からそう思うと、後部座席の隣に座るクリスの肩に、こてと金色の頭を預けた。