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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「ん……? どうしたの……?」
いつもはクリスの方からこうやって甘えてくれる事が多いので、双子の兄は不思議そうだった。
「ふふ……。クリスと一緒にいられて、同じ大学に通えて……、ヴィヴィ、幸せだなぁ~~って」
そう気持ちを込めて見上げれば、クリスの瞳は驚いた色を湛えていて。
でもすぐに瞳を細めた双子の兄は、自身も心底幸せそうに囁いてくれたのだった。
「僕も……。ヴィヴィと一緒に居られて……、傍に居て、その元気を分けて貰えるだけで、幸せだよ……」
その夜のサブリンクは、緊迫感が張り詰めるいつもとは、違う雰囲気だった。
メインリンクの半分程の広さのそこに響き渡るのは、渋いJAZZと、軽快なボサ・ノヴァ。
そして、ジュリアンの笑い声と、ヴィヴィがおちゃらける明るい声。
「じゃあ、こんなの、どうですか?」
腰を低く落とし、まるでタコがうねる様に全身をくねらせる娘に、母は腹を抱えて笑う。
「ばっか~~っ! そんなエキシビ、爆笑しか取れないってのっ」
ジュリアンの指摘通り、母娘は今シーズンのエキシビションの、振り付けを行っていた。
「え~~、じゃあ、ちょっと適当に踊ってみますね~?」
ヴィヴィは柿田トレーナーにお願いし、演技後半のボサ・ノヴァを流して貰う。
(ん~~と、歌詞の現わす通り、美しい日常の世界を、表現してみましょう……)
やはり多用したくなるのは、美しいスパイラルで天を仰ぐ様な振付。
(でも、それだとありきたりだし……)
1回転のジャンプを跳び、ランディングの流れを生かしながら両腕を上へと伸ばし。
指を交差した両腕と左右逆に腰を入れてくねらせた後、開脚した両太ももにそれぞれ這わせ、進行方向の肩を後ろにそびやかせてみる。
「あ、それ、いい感じ」
ジュリアンの良い感触の返事に、ヴィヴィは頷きながら適当にボサ・ノヴァ独特のリズムに合わせ、身体を動かしていく。
「このポーズ、キーにしましょ。ところどころに盛り込んで、印象深く仕上げるの」
両手の指を真っ直ぐ伸ばしながら、互いに交差させる。
横から見るとXに見える、そのポーズ。