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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

 パーティーも中盤に差し掛かった頃、兄達が急に姿を消した事に気付いたヴィヴィは、内心首を傾げながらもスケート関係者と雑談していた。

 特に関西に活動拠点を置く振付師の宮田が、わざわざ双子の為だけに東京まで駆け付けてくれた事に感激し。

 5月の第3週の週末を使い、今期のSPの振り付けをして貰う事になっている宮田は、

「今日、朝比奈、お借りしてもいい?」

と、呑み友達の今宵について、主のヴィヴィに悪戯っぽくお伺いを立ててきたりした。

 もちろん2つ返事で「仕事熱心過ぎる自分の執事を、遊びに連れ出してくれ」と頼んだヴィヴィの背後が、何やら騒がしくなり始めた。

 人だかりが出来始めたライブラリーの一角に、隣にいた牧野マネージャーが首を傾げる。

「ヴィヴィ、何が始まるんだ?」

「……さあ……?」

 今日の主役の一員であるヴィヴィも、何が企画されているのか知らされておらず、そう答えるしかなかった。

 しかし、人だかりの向こうから聞こえてきた音で、何が始まるのかをすぐに察知した。

「……あ……、チェロ……?」

 ぽそっとそう呟いたヴィヴィに、宮田と牧野と柿田トレーナーがすぐに喰い付いてくる。

「え? クリスのチェロ、聴けるのか?」

「俺、そういえば一度も聴いた事ないな……」

「ヴィヴィのピアノは、前のパーティーで聴かせて貰ったけど?」

 16歳の誕生日――匠海は妹の凶行のせいで誕生日前に渡英してしまい。

 双子だけの誕生日パーティーで、ヴィヴィは友人達に求められるがまま、ゴシックロリータちっくな黒ドレスで、ピアノを弾いていた。

 双子チームの面々と人だかりに近付けば、皆が気を使ってヴィヴィの為に場所を譲ってくれた。

「ありがとうございます、すみません……」

 恐縮しながらクリスが見られる場所に通して貰ったヴィヴィは、そこにいる人物に驚きを隠せなかった。

 てっきりクリス1人と思っていたのに、匠海もその向かいに腰掛け、互いに対面してペグ(糸巻き)を弄りながらチェロの調弦をしていた。

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