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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「そう言えば……、ヴィヴィの今期のSPって “ピアノ演奏バージョン” もあるんだよな?」
「…………え゛…………?」
まさかの話の展開に、ヴィヴィは変な声で絶句し、強張った表情で宮田を見返す。
「ヴィヴィの事だから、自分でも弾いてるんじゃないのか?」
「……え、えっと……、その……」
確かに宮田の言う通り、SPの音源を決定してからというもの、ヴィヴィは速攻ピアノ講師に「この曲やりたいですっ」と頼み込んで、練習を始めていた。
「ん? 弾けるんだろう? ほら、僕に聴かせてくれ」
「えぇ~~……っ!?」
突拍子の無いその申し出に、ヴィヴィは素っ頓狂な声を上げる。
「ほら、 “君の振付師サマ” が『SPの振り付けの参考にしたいから聴きたい』と言ってるんだよ? ほれほれ~」
有無を言わさぬ勢いの宮田の言う事は、確かにもっともなのだが。
(せ、せめて……、1週間前くらいに「ピアノ聴かせて?」って言ってくれませんかねぇ……?)
「……超……が付く程、へたっぴ……、ですよぉ……?」
全く要求を撤回する気配のない宮田に、ヴィヴィは困り果てた表情を浮かべながらそう確認する。
「いいよいいよ。いやぁ~~、楽しみだっ」
そう答えた宮田は、本当に楽しそうに笑っていた。
14歳だったヴィヴィにいきなり「ヴァイオリンでSPの『シャコンヌ』を弾いてみせろ」とリンクから屋敷へと連れ帰ったジャンナといい。
どうやら自分が世話になっている振付師は、無理難題を吹っ掛けるのが好きらしい。
ヴィヴィはオフショルダーのドレスから剥き出しの肩を竦めると、宮田を伴ってライブラリーから出た。
防音室の扉は開け放たれていて、その中のソファーや椅子には、匠海の友人達が腰掛けてワインを酌み交わしていた。
その中に、ヴィヴィの見知った人物がおり、向こうも気付いて手を挙げてきた。
「やっ 妹ちゃん! しばらく見ない間に、べっぴんさんになったね~?」
「ははは……、高原さん。お久しぶりです。馬術部、今も行かれてるんですか?」
まるで親戚のおじさんの様な挨拶を寄越す高原とは、15歳の時に兄を介して会っていた。