この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

 初めてシニアのグランプリ・シリーズに参戦したヴィヴィは、金メダルを獲り――そしてある選手にフランス語で嫌味を言われ。

 誰にも相談せず、ひとり落ち込んでいたヴィヴィを、匠海が気分転換にと東大馬術部に連れ出してくれたのだ。

 2年以上ご無沙汰していた高原は、今も農学生命科学研究科・博士課程に在籍し、馬術部にもほぼ毎日足繁く通っているようだった。

「また、匠海と遊びにおいで? なんたって、君らはもう東大生なんだしね?」

 高原のその誘いにヴィヴィは満面の笑みで頷くと、他の兄の友人達に断って防音室の壁際にある譜面用の棚へと向かう。

 そこから目的の譜面を取り出したヴィヴィは譜面台にセットして、若草色のドレスの裾に気を付けながら、ピアノの長椅子に腰かけた。

 鍵盤の蓋を開けてフェルトを取り除き、とっとと弾いてしまおうとしたヴィヴィに、誰かがグランドピアノの大屋根を持ち上げて突上棒で固定していた。

 顔を上げたヴィヴィがその人物――匠海に困った表情を向けたが、兄は苦笑して成り行きを見つめているだけだった。

 結局、防音室の扉も閉めさせてくれなくて、クリスをはじめとする友人達の視線に晒されながら、ヴィヴィは鍵盤に細い両手を下ろす。

 ストラヴィンスキー作曲、バレエ音楽『ペトルーシュカ』。

 それを基にしたピアノ独奏曲『ペトルーシュカからの3楽章』は、文字通り3楽章からなり、演奏時間は16分もある。

 ヴィヴィはその中で、自分がSPで使用する予定の 第1楽章:第1場より “Danse russe――ロシアの踊り” を演奏する事にした。

(それなら、2分40秒程……だし……)

 1ヶ月も練習している曲とはいえ、誰かに聞かせる前提で演奏した事の無かったヴィヴィは「ええいっ もう、どうにでもなれっ(>_<)」と若干捨て鉢になりながら腹を括った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※ペトルーシュカ : マンガ「のだめカンタービレ」でコンクールに出場したのだめが、演奏中にNHK「きょうの料理」のオープニングテーマに編曲してしまった曲
/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ