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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
そして誕生日パーティーの翌日――5月9日(日)。
双子はクラスメイト達と、神宮球場に来ていた。
東京六大学野球の春季リーグ戦を観に行こうと、皆に誘われたのだ。
東京六大学野球とは、その名の通り6つの加盟大学で総当たり戦を行うリーグで、早稲田・慶應・明治・法政・東大・立教の6大学で競う――らしい。
実は双子とも、野球をほとんど知らない。
英国では野球よりサッカー人気が高いというのも、その一因だ。
目の前で行わる、両校応援席での校旗を掲揚しての校歌斉唱とエール交換。
3塁側の東大席で、初めて見るものに興味津々の双子だったが。
それもいざ試合が始まれば、その薄い唇はあんぐりと開いてしまった。
「…………ねえ、クリス……?」
「…………うん、ヴィヴィ……」
互いに名前を呼び合った双子は、心の中で同時に呟いた。
((東大……、弱ぇ~~……))
野球に詳しくなくても、バッターボックスに立った東大生が全然バットに投球を当てれていない事ぐらいは分かる。
3塁側で応援しているのに、まず3塁まで選手が出てくれないのだ。
その双子の様子に、隣の円達クラスメイトが顔を見合わせて吹き出した。
「あははっ やっぱり知らなかったんだ? 東大が異常に弱いってこと」
「なんせ、6大学の連敗記録80試合、を更新したばっかりだからな~」
「「はっ 80試合っ!?」」
クリスが隣の三宅を見つめれば、彼はその巨体を揺らしながら白い歯をこぼす。
「おうよ、2017年(4年前)から負けに負け続け、春秋リーグ戦の連敗記録を更新し続けとる」
「はは……ははは……」と乾いた笑いを零したヴィヴィだったが、それでも母校が記念すべき1勝を挙げられる様にと、声を枯らしながら応援した。
(ああ……。でもだから、お兄ちゃん……。試合に誘ったのに、来なかったんだ……)
先日、匠海と真行寺を今日の野球観戦に誘ったのだが、兄達は苦笑しながら「「遠慮しておきます」」と断っていた。
7回に1-1で同点に追い付いた時には、応援団とチアリーダー達が壇上に登り、嬉々とした表情で東大応援歌『ただひとつ』を観客と歌い上げた。