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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

♪ ただひとつ 旗かげ高し

  いま輝ける みそらのひかり

  天寵を負える子ら

  友よ 友 ここなる丘に 

  東大の旗立てり 伝統の旗 

  東大の光 たたえ たたえん

  たたえ たたえん ♪

 なんと、檀上には濱田総長も乗り、皆と肩を組んで大合唱していたりして。

(濱田総長……、実は結構、学生に愛されてる感じ……?)

 結局3-1で東大は負けてしまったのだが、それでもヴィヴィは、

「なんか “大学生活” って感じ~? おもしろ~いっ」

と、今まで体験して来なかった新たな機会に、満足そうに笑ったのだった。

 そしてその一方、少し気になった事があった。

 双子の所属するクラスは総勢30名で、そのうち女子は6名。

 ヴィヴィ、円、ブリちゃん、範子、玲子さん、恵美。

 その中の玲子さん(おしとやかなお嬢のようなので、皆から親しみを込めて “さん” 付けされている)が、今日はいつもとは違い、よく喋っていたのだ。

 大学では物静かな彼女の様子からは想像出来ないその姿に、ヴィヴィは野球そっちのけで驚いていたのだが。

「玲子さん? うん、日本語の時は、いっつもあれだけ喋るんだよ~。英語のリスニングは得意だけど、スピーキングは苦手なんだね?」

 円のその言葉に、ヴィヴィは初めてその事実を知った。

 フルートが大好きの引っ込み思案な子 と思っていたのに、実はそんな事で苦しんでいたなんて。

 いつも顔を合わせているのに気付けていないかった、鈍感な自分が不甲斐なくて。
 
 ヴィヴィはそれ以降、大学では彼女にゆっくりと明瞭な英語で話し掛け、根気強く返事を待つ事を心掛けたのだった。








 5月12日(水)。

 その週から、双子はバレエ教室に通い始めた。

 当初からその予定で、水曜は3時限目(~14:30)までしか講義を入れていなかった。

 向かったのはもちろん、幼少の頃から世話になっているYバレエカンパニー ――吉野都が代表を務めるスクール。

 クリスは2シーズン前のFP『牧神の午後』を滑るにあたり、モダン・バレエを習っていた。

 そして今シーズンのSPの為にも、またモダン・バレエを選択した。

 クリスのSP――ストラヴィンスキー作曲、バレエ音楽『ペトルーシュカ』の為。

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