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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

 そしてその2日後――5月14日(金)。

 大学は翌日から始まる五月祭の為に、午後からは休校だった。

 早朝からリンクで練習を始めた双子は、午前中にテレビや雑誌各社の取材を熟し。

 そして午後――リンクでは白のTシャツに黒のオーバーブーツのレギンスを履いたヴィヴィが、FPの通しをしていた。

 しかしそれは、ただの通し練習では無くて、リンクサイドには双子チーム以外にスケ連のスタッフと、シャネル・ジャパンの広報企画部の面々――総勢15名が揃っていた。

 妙な緊張感が張り詰めるメインリンクには、いつもと違って本当にヴィヴィ1人しかいない。

 4分間のFPを滑りきったヴィヴィは、シャネルのスタッフが向けているカメラ機材に向かって、ぺこりとお辞儀をしてみせる。

 その小さな顔には、幾ばくかの緊張が浮かんでいた。

 リンク中央から、皆のいるリンクサイドへと滑って行く。

 牧野マネージャーが向けてくれたiPadの画面には、白髪を一括りに纏めたサングラスの西洋人の御仁が映し出されていた。

 カール=ラガーフィルド。

 シャネルの現ヘッド・デザイナー。

 そしてフェンディ、クロエ、自身の名の付いたブランドのデザイナーまで兼任している、とんでもない人。

 実は御年88歳だったりするのだが、背筋はシャキッと伸び、肌艶も良く髪もふさふさ。

「どうもありがとう、ヴィクトリア。素晴らしい編曲に独創的な振り付け――。もっと滑り込んで全身から喜怒哀楽が漲る程になれば、見応えのあるプログラムになると思うよ」

 ドイツ出身だが、流暢な英語で語り掛けてくるカールに、

「ありがとう、ございます……」

 ヴィヴィは苦笑を浮かべながら、そう礼を述べた。

 そりゃあ、そうだろう。

 双子がFPの振り付けの為に渡米し帰国してから、まだ一週間しか経っていない。

 GWにデトロイトで振付を受けている最中、振付師のパスカール=カメレンゴと衣装の話になり。

 ヴィヴィはどうしても映画の最後に出てくる、ココ=シャネルの来ているワンピースのデザインを使いたがった。

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