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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
1時間に渡る講演は質疑応答も白熱し、成功に終わった。
「ちょっと、意見……。偏ってた、ね……」
靖国参拝と諸外国等の摩擦について、遠回しにそう呟いたヴィヴィに、円も「だねえ~~」と難しい表情で頷いていた。
その後、胃もたれライブ2021なるものを横目で見ながら皆とベンチで休憩していると、今日何回目か分からないひそひそ声が、ヴィヴィの鼓膜を揺らした。
「あっ ヴィヴィちゃんと、クリス君だ……っ」
「ホントだったんだ~、東大生になったの!」
これはまだいい。
大体が一般の客で、TV等のメディアで散々騒がれた “篠宮双子が東大合格!?” の単なる興味本位の声だから。
写真を求められたら応えて、サインして握手をしたら、後は結構放置してくれる。
五輪以降、双子はしょっちゅうそういう場面に出くわし、幸か不幸か慣れっこになり始めていた。
(お兄ちゃんと一緒にいる時は、本当に放っておいて欲しいけど……)
「ねえ、見たぁ? CM……。 “赤門” で撮ってたやつ……」
「見たみた……。京進ゼミの。いつ、撮影に来てたんだろうね……。全然気付かなかった」
女子2人の声にちらりとそちらに視線を向けたヴィヴィに、どう見ても在校生の女子達はバツが悪そうに視線を逸らした。
新スポンサーの予備校のCMを撮った赤門は、東大=赤門 という図式が成り立つほど、安田講堂と並んで有名な歴史的建造物――それはここ、本郷キャンパスにある。
1年生~2年生の教養学部生が講義を受けている駒場キャンパスとは違い、本郷キャンパスは主に3年生~4年生の、それぞれの希望学部へ進んだ生徒達が講義を受けるキャンパスだというのは、前述の通り。
有名人の双子は入学当初、駒場キャンパスで注目の的だったが、今は見慣れたのか普通に学生生活をおくれている。
けれどまだ1度しか訪れたことのなかったここ本郷では、双子は異常に注目の的だった。
「………………」
(なんか……、なんだろ……。変な感じ……)
肌で感じる違和感の正体が分からず、内心首を捻っていたヴィヴィだったが、
「まだ時間あるから、ロボコン、見に行きたい……」
クリスがそう言い出したので、それに付き合ってベンチを立った。