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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

「大学じゃスカートが多いから、なかなかお目にかかれないけど。う~~ん、良い尻だっ」

 再度ヴィヴィの後ろに回り込んで、モミモミしてくる円から逃げ惑うヴィヴィを、

「あははっ もう円ちゃん、面白過ぎ」

 そう笑い飛ばす匠海と、

「………………はぁ」

 脱力する真行寺と、

「……女子だから、いいか……」

 何故か放置するクリスなのだった。





 その後、江の島観光をした5人は、魚介も満喫して夕刻に鎌倉を出発したのだが。

「はぁ~~、早く明日にならないかな~~……」

 革のシートに身を預けながらそう呟く円に、隣のヴィヴィが不思議そうな表情を浮かべる。

「へ……? どうして?」

「え~~……、だって、早く、受けたくない……?」

 膝の上に乗せたクッションを抱き締める円のその返しに、ヴィヴィは何の事やら見当が付かなくて。

「…………? マドカってそんなに、大学の講義、好きだったの?」

(ヴィヴィだって、学びたいから大学進学したけど。そんな月曜が待ち遠しくなるほどでは、ないな~。だって、休日はこうやって、お兄ちゃんとお出掛け出来たりする可能性もあるし……? てへっ)

 瞳の端で匠海の姿を捉えながら、頭の中でぶりっ子笑いするヴィヴィに、円は何故かクッションを放り投げてきた。

「んな訳ないっしょっ!? そ、そっちの授業じゃ、なくって……っ」

「え?」

 クッションをキャッチしながら首を捻るヴィヴィに、その隣に腰掛けていたクリスがぼそりと囁く。

「……ロシア語……」

「あ……、ああ、ロシア語! そっか、セルゲイ、明日からだったね~?」

 昨日本郷キャンパスで顔合わせをしたロシア語講師は、これから毎週月曜日に1時間半のレッスンをしてくれる事になっていた。

 「勉強熱心だなぁ~」と感心して見つめた円の頬は、何故かほんのり赤くなっており。

 違和感を覚えたヴィヴィはその姿をじっと見つめながら、行きしなのリムジンの様子を思い浮かべる。

(ん~~……? なんかマドカ……、来る時もずっとセルゲイの話、してたような……? めっさ池様とか……、眉のすぐ下に青い瞳があるなんて、どんだけ彫り深いんだとか……、優しそうだよね~♡とか……)

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