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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
確かに甘いマスクで背も高くてモテそうな人だったが、ヴィヴィは明日が待ち遠しくてしょうがない程、家庭教師が楽しみではなかった。
なのに、円はヴィヴィから取り上げたクッションを、切なそうに抱き締めていて。
(……あ、れ……? あれれ……、も、もしかして……?)
「……もしかして……、マドカ……、セルゲイに、ひと目惚れ……?」
そう単刀直入に切り出したヴィヴィに、円はカラコンを入れた瞳をこれ以上無いほど見開き、
「……~~っ!? ばっ ヴィヴィっ 何て事をっ!!」
取り乱してわたわたと慌てふためく円に、
「あ! そうなんだ~。へ~~、ふ~~ん。そっかぁ~~♡」
カレンのクリスに対する恋心を12年も気付かなかった “異常に恋に鈍感” なヴィヴィにしては、翌日に気付いただけでも凄い成長なのだが。
男どもは円の恋心に、行きの10分程で気付いていた為、
(((ど……鈍感にも、程があるだろう……)))
そうヴィヴィに心の中でドン引きしたのは、言うまでもない――。
翌日の月曜日からは、30歳の美形ウクライナ人家庭教師――セルゲイによるロシア語教室が開講し、3人の中でも一番円が張り切って勉強し。
水曜は習い始めたモダン・バレエに四苦八苦するヴィヴィと、1年学んだモダンを覚えていた優秀な生徒のクリスは、一緒にレッスンを受け。
そして木曜日――5月20日。
2度目になるスケート部の部練に参加した双子は、そのまま新歓コンパへと雪崩れ込んだ。
“居酒屋” なるものに、初めて足を踏み入れた双子は興味津々で。
「お前ら~! ぜっっっったいに、未成年者に酒、飲ますなよ?」
そう大声で言い渡したのは、スケート部の顧問。
双子を含めて1~2年まで7人も未成年がいる為、OBを7名含めた総勢26名の部員達は「は~~い」と良い子の返事をした。
「まじで、頼むぞ? 特に双子に飲酒強要した暁には、お前ら一生、スケ連に睨まれるからな……」
お目付け役の顧問がそう呟くのを、皆が「分かってるって~」と苦笑していた。