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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「それ、かなり高いだろう?」
OBのその突っ込みに、石渡は眼鏡を中指で押さえながら深く頷く。
「ええ。濱田総長が付けてくれた予算ギリギリまで使って、作ってやりましたからね」
「ヴィヴィ、カッコいいね!」
ヴィヴィの傍に居た新入生の黒川みどりが、瞳を輝かせながら肘で突いてくる。
「うん。ヴィヴィ、白のほうが好き」
「モノトーンの迷彩……。いい……」
クリスも満足気にそう呟き、蟹江に「そうだろう、そうだろう」と、ばしばし背中を叩かれていた。
皆の手に渡り、じっくりと見られたウィンドブレーカーは、やがてヴィヴィの手にも回って来て。
表裏を返してしげしげ見つめていたヴィヴィは、こてと首を傾げる。
「ヴィヴィ、てっきり、スケートする “ひよこさん” のイラスト、入ってるんだと思ってた」
部練参加初日に貰ったスポーツタオルの、東大のゆるキャラを思い出しながら呟いていると、
「だって~、男子が「あんな可愛いの、着れるかっ!」って反対するから~~」
そう不満そうに割って入ってきたのは、唯一7級を持つ2年の尾本。
「あったりめ~だろっ!? 実際にインカレとかで、ファンシーなの着る羽目になる男子の事も、考えろ~~っ」
現役の男子陣のその突っ込みに、ヴィヴィは苦笑した。
「じゃあ、もう1つの東大のキャラクターはどうですか? “ユータスくん” でしたっけ? まあ正直、ヴィヴィは「いけてない」と思いますけど」
何故か黒カラスの “ユータスくん” は、大きな目の下に黄色のクチバシ、そして胸には大きくUと描かれている。
「 “ユータスくん” の良さが分かんないとは、まだまだだね~」
「え~~?」
遠い宇宙――からす座の銀河で生まれた “ユータスくん”。
『「一人前になってきなさい」と親から修行に出されて、友達と太陽系まで来たんだけれど、宇宙船が地球に墜落しちゃった』
というゆるい設定で、主に駒場キャンパスで愛されているらしい。
「なんせ、Twitterまで、してるからねえ~」
「フォロワー、たったの109人だけどなっ」
賑やかな新歓はそうやって終わり、2年生以上は2次会へと繰り出す事になった。