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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「ウィンドブレーカー、来週の部練で渡すな!」
石渡のその言葉に双子は頷く。
「じゃあ、その週末にある “春の関カレ” で、先輩達は着る事、出来ますね?」とヴィヴィが。
「僕達も、Art ON Iceで、着れるね……?」とクリスが。
その双子の返事に、石渡は縁なしメガネの奥の瞳を細めた。
「お~~いっ OB呼んでるから、とっとと行くぞ~!」
4年の先輩に羽交い絞めにされた石渡と皆に挨拶すると、双子は松濤のリンクへと向かい。
ちょっと食べ過ぎたカロリーを消費すべく、1時間半滑り込んだのだった。
屋敷に帰ると、匠海が少し心配そうに双子を出迎えてくれた。
「アルコール、飲んでないよな? ビールやタバコ片手に写真なんて、撮ってないな?」
兄のその確認に、双子はこくこくと頷いてみせる。
「そうか……。用心に越した事は、無いからね?」
まるで自分の事の様に心配してくれる匠海に、双子は「「うん、ありがとう」」と礼を口にする。
昨今、TwitterにFacebookといったSNSの普及で、たった1枚のそういった写真で、マスコミにまで飛び火する大騒動になる恐れがある。
それは部の上級生達も顧問も良く理解していて、今日撮った写真もテーブルのビール瓶が映り込まない様、気を使って撮って貰った。
「………………」
(……周りに気を使わせちゃって……。なんか、申し訳ないけど……)
クラスメイトから聞いた話によると、サークルでは未成年だろうが、新入生は上級生にお酒を強要される事が通例らしく。
自分達のせいで、スケート部のそういう慣習も立ち消えたとしたら申し訳ない、とヴィヴィは思ったのだった。