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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

 その翌週末、5月29日(土)~30日(日)。

 スケート部の皆が “春の関カレ = 関東学生FS選手権大会” に出場している最中。

 双子は国立代々木競技場にいた。

 Art ON Ice――1995年にスイスのチューリヒでスタートし、世界各国で開催されているアイスショー。

 日本には2013年に上陸し、世界的シンガーのライブパフォーマンスに合わせ、五輪や世界選手権のメダリストをはじめとするトップスケーターが、エキシビションを披露するものだった。

 双子は今年になって、初めて日本公演に出演する事になった。

 というのも、双子の東大合格が決まった際、

『よっし! これで双子は取材規制撤廃よね? どんどんじゃんじゃん、マスコミ露出、して貰うからね? 後、今シーズンのアイスショー、全部休んだんだから、来シーズン、馬車馬のように働いて貰うから! 覚悟しておいてね?』

 そう宣言したスケ連のスタッフはその言葉通り、双子にアイスショーのスケジュールをガンガン割り当ててきた。

 結果、オフシーズンの間に6公演(7会場)も、アイスショーに出る事になったのだ。

 英語で「平昌五輪 金メダリスト、世界選手権3連覇」と紹介されたヴィヴィは、カナダのプロスケーター パトリック=チェンにエスコートされ、スポットライトを浴びながら暗いリンクに現れ。

 彼に肩に巻いていた大判の黒ストールを脱がして貰ったヴィヴィは、にっこりと微笑みながらその退場を見送る。

 「ガガっ ザ~……」というラジオのチューニングを合わせる音に合わせ、氷の上に置いたラジカセを弄るヴィヴィ。

 そして聞こえてきたのは、ルイ=アームストロングの、しわがれた艶めいた歌声。

 ヴィヴィが滑り出したのは勿論、ジュリアンと振り付けたエキシビ『What a Wonderful World』。

 今シーズン初披露のエキシビは、途中からボサ・ノヴァ・バンドの生演奏に切り替わり。

 花々を飛び回る蝶の様に可憐に滑りきったヴィヴィには、大きな拍手が贈られ、久々の自分達の振付に嬉しい手応えを感じたのだった。




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