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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
ヴィヴィはうっとりと兄を見つめる。
濃いデニムシャツにベージュの細身カーゴパンツ。
そんなシンプルなスタイルでも、9頭身の匠海が纏うと凄みさえ感じてしまう。
広い肩幅は、なだらかな稜線の如く。
逞しい胸板は美しい曲線を描き、その下の腹筋は白い肌の下で6つに割れているのを、ヴィヴィは毎週確認している。
そして引き締まった腰の下は、長くて邪魔にならないかと思う程、すらりとした両脚。
食べ終えた食器をキッチンへと運びながら、ヴィヴィは匠海の姿を追い掛ける。
食洗機にカトラリーをセットする兄に、食器を手渡しながら、ヴィヴィは呟く。
「お兄ちゃん」
「ん?」
俯きながら聞き返す匠海に、
「お兄ちゃん」
「なに?」
再度兄を呼ぶヴィヴィ。
「お兄ちゃん」
「何だよ?」
食洗機をセットし終えて顔を上げた匠海に、ヴィヴィは微笑む。
「うふふ」
「ん~? 変な奴だな」
手が汚れたのか妹の頭を撫でようとして止めた兄は、ごつりと20cmの身長差から頭突きしてくる。
「あいたっ だって……、嬉しいんだもん」
「何が?」
シンクで手を洗う匠海の背後から、その腰に両腕を回したヴィヴィは、広い背中に顔を擦り付けて甘える。
「ふふっ 「お兄ちゃん」って呼んだら、ヴィヴィの事見てくれて、瞳が凄く優しいの」
兄の灰色の瞳は普段は怜悧な光を湛えていて、それも勿論ヴィヴィは好き。
けれど “妹である自分” を見つめる慈悲深い瞳と、“妹でない自分” を見つめる優しさと熱情を湛えた瞳はもっと好き。
(ヴィヴィ、自分の瞳、好き……。お兄ちゃんと、同じ色……)
他は全然似通っていないが、唯一兄妹として共通しているのは瞳の色だけだった。
そう思いながら更に腰に回した腕に力を籠めれば、匠海にやんわりと解かれ。
こちらを振り返った兄の胸に抱き寄せられた妹は、己の何もかもをそこに預けきった。
無意識に兄の香りを深く吸い込めば、それを吐き出すのと同時に、色んな物が解き放たれていく。