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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
肩に入っていた力。
目蓋やこめかみ辺りに留まっていた重さ。
そして何よりも顕著なのは、いつの間にか凝り固まっていた心。
匠海の暖かさと頼りがいのある腕の中に包まれて、固く透明なウロコが1枚1枚剥がれ落ちていく。
「……好、き……」
夢見心地にそう囁いたヴィヴィは、まるで腰砕けの様に全身の力が抜けてしまい。
妹の様子に気付いた兄の手によって、横抱きされてリビングのソファーへと連れて行かれた。
まるでソファーベッドの様に背凭れまでが深いそこに、両脚を投げ出した匠海の股の間、横抱きにされたまま降ろされて。
細い顎の下に指を添えて上を向かされたヴィヴィは、またうっとりと匠海に見惚れる。
(本当に、なんて綺麗な男の人なんだろう……)
彫りの深い目元から、理想的な曲線を描いて落ちる、張りのある頬。
高くすっと通った鼻筋は、小鼻の膨らみ具合も控えめで品があり、その下の少し大きめの唇は肌の色に近く色素が薄い。
眉目秀麗な美丈夫。
匠海にはどの褒め言葉でも足りなく感じさせる、凄みがある。
一方、その匠海本人は、これ以上無いほど頬を緩めてヴィヴィを見下ろしていた。
「ねえ、ヴィクトリア。何でそんなに、可愛いんだ?」
「……へ……?」
心の中で兄の事を同じ様に「何でそんなに、綺麗なの?」と思っていたヴィヴィは、咄嗟に変な声を上げてしまった。
「お目めはバンビの様にうるうるで、大きいし」
「……そ、そう……?」
うるうるなのは、兄に至近距離で見つめられているからだと思うのだが、ヴィヴィは困った様にそう聞き直す。
(そう言えば、ダッドにも「My sweet bambi(私の可愛い小鹿ちゃん)」って呼ばれるな……)
「こんなに華奢なのに、どこ触っても柔らかい……。でも、ほっぺはぷにぷに」
「むぅ~~……」
白い頬を指先でぷにぷに突かれ、ヴィヴィは桃色の唇を尖らせる。
(ヴィヴィ、頬のラインが丸っこいから、いっつも幼く見られるのに……)
大学生になってもノーメイクで、服の趣味も大人っぽくないので、ヴィヴィは今でも大学生に見られない事がしょっちゅうある。