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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
大学に進学して約2ヶ月の間。
ヴィヴィはしょっちゅう告白を受けていた。
幸い、同じクラスの男子からはなかったが、新入生~2年生、顔も名前を知らない男子にいきなり呼び止められ、「好きです」「俺と付き合って?」と言われて。
その数は延べ25名に上る――最近はさすがにもうないが。
勿論ヴィヴィは丁重にお断りしたが、その内数回は他人にその現場を目撃されていたかもしれない。
(あ……、こういう事も、顰蹙を買う理由、だったりするのかな……)
ふと2年女子を敵に回してしまった一因らしきものに思い当たったヴィヴィは、すぐにその思い付きを頭の中から追い出す。
今は最愛の匠海との幸せな時間――そんなくだらない事を思い出して、台無しにしたくなど無かった。
「くそっ 俺のヴィクトリア、なのに……」
悔しそうにそう呻いた兄に、ヴィヴィはふっと微笑む。
告白を断る理由についてほぼ90%、相手から訊かれたが、ヴィヴィは「恋人がいるから」とは言わなかった。
「大好きない人がいて、その人以外は考えられない」――そう口にしていた。
(「恋人がいる」なんて言って、「誰?」って追及されても、言える訳なんてないし……)
「そうだよ? ヴィヴィはお兄ちゃんの、だもん」
親友にも打ち明けられなくとも、
両親に紹介出来なくとも、
兄は自分の “家族” であり “世界一大切な人” であり、将来を誓い合った “恋人”。
(だから、そんな事で、やきもち焼かないで……?)
「俺の、何?」
真顔で見下ろしてそう尋ねてくる匠海に、
「え……? え、えっと、その……」
まさかそんな事を突っ込まれると思いもしなかったヴィヴィが、視線を彷徨わせながらワタワタする。
「ん? ほら、言ってごらん?」
そう促す兄の声が甘えたもので、薄い唇を辿る指先がヴィヴィの心をぴくぴくと震えさせ始める。
「……お、お兄ちゃん、の……、こ……、コイビト……っ」
妹の答えに匠海はふっと微笑むと、「良く出来ました」と言わんばかりにその金色の頭を撫でた。
そして、
「ヴィクトリア……、お風呂、入ろうか」
「……うん……っ」
兄のお誘いに、ヴィヴィは恥ずかしがりながらも一も二も無く飛びついた。