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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第26章
「あ。えっと、母親が違うんです。兄の生みの母は日本人で、今の母は英国人なので……」
「ああ、だから。妹さんはどっからみても白人美少女だもんね。日本語うまいな~って思っちゃった」
そう悪気なくからっと笑われて、ヴィヴィは困ったように微笑むばかり。
「あ……でも笑顔はちょっと似てるね、篠宮君に」
「そう、ですか?」
実は周りに「匠海とは似ていない」と言われることが多いヴィヴィは、小さく首を傾げる。
「うん。いつも見てるから分かる!」
「え…………?」
(いつも……?)
藤峰の気になる発言に、ヴィヴィは彼女の顔をまじまじと見つめる。
「四年前の国体で篠宮君に一目ぼれして、追っかけてここ受験したのに……篠宮君ったら『大学では馬術はしない』って言うんだもの。あったま来ちゃって――!!」
その当時のことを思い出したのか、藤峰は両拳を握りしめて絶叫する。
「はあ…………」
本来なら匠海ラブのヴィヴィは匠海に惚れているという藤峰にやきもちを焼くところだろうが、あまりにもあっけらかんと暴露されるとヴィヴィも正直拍子抜けしてしまう。
「まあ……乗馬してほしいけど……戻ってきてほしいけどっ! 騎乗していない篠宮君もカッコいいからいいんだけどね!」
藤峰はそう言うと、何故かヴィヴィの両腕をそれぞれ握りしめて
「篠宮君ってめちゃくちゃモテるのよ~! お願い! 私に協力して!」
と懇願してきた。
「…………えぇっ!?」
その迫力に圧倒されて、一瞬絶句してしまったヴィヴィだが、直ぐに驚きの声を上げてしまう。
「おいこら……。妹ちゃんにむちゃぶりするな」
冷めた目で藤峰を見やる高原は、そう窘めると「ふう……」と小さく息を吐き出した。
「不思議な奴だよな、匠海って……。軽薄なわけでも非情なわけでもなく凄く面倒見がよくてモテるのに、特定の相手と付き合わないっていうのもな……」
少し心配そうにそう呟いた高原に、藤峰が目を剥いて焦ったように口をはさむ。
「わっ! 馬鹿! 妹の前でそんなこと言って……!」
「あ……今のオフレコ……」
ヴィヴィの前であたふたとする二人に、ヴィヴィは目を丸くしたが、やがて困ったように笑って見せた。
「いいんです……お兄ちゃんが『意外と遊んでる』っていうのは、前に耳にはさんで知ってますから……」