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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

 思う存分妹を堪能してすっきりした表情の匠海は、ヴィヴィの面倒を嬉々として熟していた。

 お風呂に入れ、身なりを整え、手早く作ったランチを食べさせ、帰り支度をし。

 まだ足元がふら付くヴィヴィに、玄関ホールで手を貸しながら、匠海はふと何かを思い出した様に口を開いた。

「ヴィクトリア、ちょっと頼みたい事があるんだけど」

「え? な、何……」

(も、もうえっちな事は、今日は無理、だよぉ~~?)

 脅えた表情で兄をちら見するヴィヴィの頭を、匠海は大きな掌で撫でながら、続ける。

「うん、実は――」








 6月の2週目、大学では陰口を叩かれながらも、ヴィヴィはクリス達と共に、

 ・月曜日 ロシア語家庭教師

 ・水曜日 モダン・バレエのレッスン

 ・木曜日 スケート部の部練

 に励む傍ら毎日、スケートのレッスンに講義の予習復習、そして楽器練習も手を抜かずに勤しんだ。

(まあ、やりたい事をやってるだけだから、忙しくても幸せなんだけど……)

 つい3ヶ月前までの、苦しくてやりたい事も出来ず辛かった受験戦争を思い起せば、何でも乗り越えられそうなヴィヴィだった。

 そしてその週末――6月11日(金)~13日(日)。

 篠宮邸には2人の賓客を迎えていた。

 キャシー=ロード(33) と クリス=ロード(31)。

 2人は姉弟で、バンクーバー五輪とソチ五輪に日本代表として出場した経歴を持つ、アイス・ダンスのペアだった。

 弟クリスの膝半月板損傷の為に第一線を退き、現在はショースケーターとして活躍している。

 その姉弟が、どうして篠宮邸に滞在しているのか――。

 話は世界選手権が終わった3月半ばに遡る。

 ヴィヴィの敬愛する浅田真緒主催のアイスショー、THE ICE2021から、早々に出演オファーが飛び込んだのだ。

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