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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「えっと、話は戻って……。昨年は双子プログラムを断っちゃって、THE ICE側にも真緒ちゃんにも、もちろんお客さんにも申し訳なかったから。なんか皆を楽しませられるもの、がしたいです」
そうはっきりと自分の意見を口にしたヴィヴィに、ロード姉弟も、Jrも頷いて同意した。
その日は双子がどれくらい、アイス・ダンスやペア・スケーティングとしての基礎が出来るかを、陸と氷上で確認し。
そして約7分に渡る曲をどう編曲するか、で初日は終了した。
20時には切り上げて帰宅した4名は、両親と匠海も交えて歓迎会を兼ねたディナーを囲んだ。
ロード姉弟は、父がアメリカ人で母が日本人。
2人とも黒髪で目鼻立ちがはっきりした美男美女。
キャシーは弟と妹をもつ姉なので、しっかり者で優しくて。
クリスはユーモア溢れる、何だか悪戯っ子の様な人だった。
2人をすっかり気に入った両親は、常と同じ様にワインを勧め始めて。
「ダッド、マム。頼むから、嫌々飲ませたりしないでねっ!」とヴィヴィが両親に釘を刺し。
「2人とも、本当に適当に切り上げて、いいですから……」とクリスがロード姉弟に忠告し。
最後の頼みの綱とばかりに匠海を見つめた双子に、長男は笑って「大丈夫」と返したのだった。
ディナーを終えた双子は、今日の講義の復習を、速読を駆使して手早く終わらせ。
今度はリビングに移動して飲んだ暮れていた両親達を「「ほどほどに、ね」」と諌めながら防音室へ移動した。
ヴァイオリンとチェロをそれぞれ練習し始めた双子を追い駆けて、ロード姉弟が防音室へとやって来た。
「匠海に、ヴィヴィ達が楽器弾けるって聞いてね~」
ほんのり頬を染めたキャシーと、全然酔った風でないクリス。
「あ、うん。クリス……Jrはチェロとトランペットで。ヴィヴィはこの通り、ヴァイオリンとピアノをやってます」
手にしたヴァイオリンを軽く持ち上げながら答えたヴィヴィに、クリスが瞳を輝かす。
「俺、トロンボーン吹きなんだ。トランペット、いいね~」
「え……、そうなんですか?」
驚くJrに、キャシーが「ちなみに私はフルート吹くのよ?」と持参してきたらしいフルートケースをみせる。