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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「真行寺さんのは、サンゴが多い、とか……?」
クリスのその問いに、円は「あ、そうそう。お兄ちゃんのはサンゴが沢山あった気がする」と納得していた。
朝比奈も交えて業者から簡単な説明を受けた後、ヴィヴィは不思議そうに首を傾げた。
「餌やりは、どうすればいいんですか?」
「餌はこのオートフィーダー(自動餌やり機)で定期的に与えられますので、やる必要はありません」
「……え……。餌やりくらいしか、ヴィヴィ出来る事、無いのに……」
業者のその衝撃的な説明に、ヴィヴィは悲壮な表情を浮かべる。
水槽の掃除等のメンテナンスも、業者が来てしてくれるし、エサもやらなくて良いなんて。
“自分が飼っている” 感じがしなくて、つまらない。
「それでしたら、オートフィーダーは使用せず、1日1回、2~3分で魚達が食べきれる量を与えて下さい。やり過ぎは禁物ですよ? 水質が悪化して魚が死にますからね」
そう説明してくれた業者の言葉に、ヴィヴィはもろ手を上げて喜んだ。
業者が行った後、ヴィヴィは嬉々として水槽にへばり付いて叫ぶ。
「ヴィヴィ、お魚サンに、名前付ける!」
大学生とは思えないその幼さ全開の様子に、真行寺は笑いながら「どうぞどうぞ」と促した。
「えっと……、君がピクルスで~、君はピーナツ。そして君はピンキー……って、名前付けてるんだから、動かないでぇ~~っ!!」
全部で10体いる個体それぞれを指差しながら名付けていたヴィヴィは、混乱を来してそう喚く。
「んな、無茶な」
突っ込んできた円の隣で、ヴィヴィはまた名前を確認しだす。
「え? あれ……? この子が、ピンキーで……って、もう、判んなくなっちゃった……」
こつんとアクリルの水槽に額をくっつけて項垂れるヴィヴィに、円が続く。
「じゃあ、私がもっとイケてる名前を付けてあげよう~。この子は、なんか……権兵衛。この子は目つき悪いから鬼瓦。この子はしましまだから縞次郎」
「~~~っ!? 何で時代劇ちっくなのっ!?」
「ヴィヴィの付けた名前も、だいぶ変じゃんっ」
互いに名付けセンスが無いくせに、やいやいじゃれあう2人に、男3人は肩を竦めてその様子を見守っていたのだった。