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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章
「このドレスは、パリ―ダラス・メティエダール・コレクションのランウェイでも評価の高かった1枚なのですよ。お嬢様の様にお若くて可愛らしい女性から、年を重ねられた女性まで、華やかに彩る事が出来ると」
店員に促されて着替えたヴィヴィに、グレコリーは満面の笑みで、
「か、可愛過ぎる! もうヴィヴィにしか着こなせないよ、このドレスはっ」
そう親バカ全開で褒め称え。
結局 その数十万円もするワンピを、いとも簡単に購入してしまったのだった。
「あ、ありがとうっ ダッド」
ぺこりと頭を下げてお礼を言って寄越す愛娘を、グレコリーは愛おしそうにその胸に抱き込む――ブティックで会計を待っている最中に。
「あ~~、可愛いっ 死ぬほど可愛い! やっぱり娘っていいなぁ~~。息子じゃ、こうはいかない」
「……はは……」
ひしっと抱き締められた胸の中で、ヴィヴィは乾いた笑いを零すしかなかった。
その後、シャネルビルの10階にあるカフェ――ル・ジャルダン・ドゥ・ツイードに移動した2人は、屋上テラスのソファー席に通された。
紅茶を選んだヴィヴィへ「アフタヌーンティーのセットがあるよ?」と促す父に「カロリー高いし、ランチ、ちゃんと食べたから」と断ったのに。
ツイードを模したガラステーブルに並べられたアフタヌーンティーセットに、ヴィヴィは可愛らしく父を睨んだ。
「ヴィヴィはそうやって睨むと、本当にジュリアンに似てるね。って事はクリスも似てるのか~」
まったく堪えた様子無く、むしろ睨まれて喜んでいる父に、ヴィヴィは細い肩を竦めた。
(っていうか……。 “娘の睨み顔” が最愛の妻と似てるって、微妙……。実はダッド、マムに睨まれてばっかりいるとか……?)
6月後半、気温は毎日25度を超え、梅雨に入り蒸し暑くさえある。
そんな中、涼しい風が吹き抜けていく屋上は気持ち良かった。
ティーポットから注いだアールグレイを口にするヴィヴィに、グレコリーは「ほら、マカロンだよ~」とピンク色のそれを摘まんで差し出してくる。
「いいよ。ダッド、食べちゃって」
そう断るのに何度も何度も、「じゃあ、チョコは?」「焼き菓子も美味しそうだぞ?」と勧めてくる父。