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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

「………………」

(一度も喧嘩していないし、受験中は週に1回で互いに我慢したし、ひ、避妊は……)

 付き合い始めて1ヶ月も経たない内に、自分から「ゴム着けないで」と懇願したヴィヴィと、それを受け入れた匠海は、約束事を守れなかった訳だが。

 しかしそれ以降、ヴィヴィは “ピルを飲めない & 飲まない” 時期も勿論あった。

 その際、ヴィヴィは匠海に「ピル飲んでないの」と伝え、兄も嫌な顔一つせず(それどころか、「きちんと言えて、良い子だね」と誉めながら)ゴムを着けて愛してくれた。

 話は戻って――。

 よって、大学受験も終えて大学生活にも慣れたヴィヴィは、早速「親孝行するぞ!」と張り切っていたのだ。

 しかし、いきなりそう言われても、グレコリーは娘に何もして欲しい事が思い付かなかったらしく。

「う~~ん。じゃあ、今度、ダッドとデートして♡」

 そうニヤケながら、おねだりしてきたのだった。

「え? あ、うん……。分かった。でも、ちゃんと、それまでに考えといてね? ヴィヴィが出来る “恩返し” 」

 



 かくかくしかじか――で現在 父娘は銀座でデートしているのだが。

「…………って、こ、こういう事じゃなくて!」

 ヴィヴィは デート = 恩返し じゃ無い事をやっと思い出し、そう小さく喚く。

「え~~……、ダッドは愛娘とお出掛けできて、心底嬉しいのにぃ」

 拗ねた様にそう呟く父を、ヴィヴィはあの手この手で宥め透かし。

 数分してやっと、その口から役に立てそうな言葉を聞く事が出来たのだった。

「じゃあ今度、ヴィヴィには “地域貢献活動” を手伝って貰おうかな――?」





 ちなみに、父に “恩返し” を口にした話には、その後があって――。

 両親と別れ、1階のリビングルームを後にしたヴィヴィは、朝比奈と連れ立って私室に戻ろうと廊下に出たのだが、

「ヴィヴィ、ちょっと待って」

 そう声を掛けながら、ュリアンが娘を追って来た。

「ん? なあに?」

「今年で、ヴィヴィも晴れて18歳――英国では成人の年齢よ。だから、母親としての務めを、私も最低限果たすわ!」

 そう発したジュリアンの表情は、何故か気合が漲っていて。

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