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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第106章               

『空にかかる

 美しい七色の虹は 

 街ゆく人たちの顔も

 染めていくんだね


 握手をしながら「How Do You Do? ――元気かい?」 

 そう声を掛け合う友人達も

 本当は「愛しているよ」と

 心の中で言っているんだ


 赤ん坊の泣き声を聞きながら

 その成長を見守る


 彼らはこれから先

 私よりも もっと多くのことを学ぶのだろう


 しみじみ思うよ

 なんて素晴らしい世界なのだろうと


 そう、本当に思うよ

 What a Wonderful World――なんて素晴らしい世界なのだろうと』



 美しく、そしてチャーミングに滑りきったヴィヴィに、満員の会場からは大きな拍手が沸き起こったのだった。







 6月30日(水)。

 5時起きで8:00迄の朝練、

 9:00~14:30に大学の講義、

 15:30~18:30にYバレエカンパニーに於いて、モダン・バレエのレッスン、

 19:30~23:00に松濤のリンクでレッスン&陸トレ、

を熟した双子は「「お、お疲れ……」」と就寝挨拶を交わし、互いの私室へと戻った。
 
 いつも通りスケート靴の手入れをしたヴィヴィは、エッジに気になる傷を見付けて眉を顰め、他にも2足あるそれらも確認し。

 バスを使って身体を解したヴィヴィは、濡れた髪のままナイトウェア姿でバスルームから出て来た。

 朝比奈はクリスの部屋にいるらしく、ヴィヴィは冷蔵庫からガス入りミネラルウォーターを取り出すと、グラスの1/3くらい注いで、リビングの隅へと歩いて行く。

 そしてへばり付いたのは、ご想像の通りの1.2mもある海水魚の巨大水槽。

 いつもと変わりない水槽内の様子に安堵したヴィヴィは、こくりとミネラルウォーターを飲み下す。

 いつもは大学から帰宅する17時頃にフレーク状の餌をやり、可愛らしく啄む姿に癒されるのだがバレエのレッスンのある水曜は、朝比奈がその時間に餌やりを変わってくれていた。

(……気持ち、良さそう……)

 ホバリング(その場でぷかぷか浮遊)している魚達は、そろそろ就寝時間で眠いのかもしれない。

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