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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
7月1日(木)。
50分の昼休憩の終盤。
いつもの様にたまり場にしている “駒場コミュニケーション・プラザ” 前の芝生で、ランチを終えたヴィヴィは、持参した苺の山を摘まんでいた。
だいたい一緒にいるメンバー、(フランス人留学生)ブリちゃん、円、塩川君、三宅君、丸尾君、クリス。
彼らもそれぞれ苺を頬張っていたのだが。
「……ヴィヴィ、さあ……」
季節外れの苺を摘まんだ丸尾が、げんなりした表情で自分を見つめていて。
「ん? なあに、丸尾っち」
ヴィヴィは不思議に思い、目蓋をぱちぱちと瞬かす。
「気持ちは、凄い嬉しいんよ……。その……、俺の身体、気遣ってくれてるんやろうし……」
「え~? 別にいいよ、そんな。ヴィヴィ、苺、大好きだし」
にへらと締まりのない笑みを浮かべるヴィヴィに、丸尾が「じゃ、なくて……」と言いにくそうに続ける。
「だからって、1ヶ月ず~~っと、苺っていうのは、いかがなもんかと……」
彼が年中金欠で、いつもカップ麺ばかり食べている。
それではいつか身体(というか胃)を壊すだろうと、ヴィヴィは苺を大量に持参するようになった。
最初は丸尾も喜んでくれて、周りの皆も嬉しそうに摘まんでいたのだが。
それが1ヶ月も続くと、さすがに飽きてきたらしい。
「ありゃりゃ……。じゃあ、次は……。う~~ん、キウイにしよう♡」
「え゛…………」
栄養価の高い果物 = 苺、キウイ、リンゴ、のイメージがあるヴィヴィはそう言ったのだが、どうやら丸尾はキウイもお気に召さないらしい。
「ん? ああ、夏だし、スイカのほうが良かった? けど、毎日ここでスイカ割りしてたら、さすがに怒られるんじゃないかと」
(第一、あんな大きなスイカを、どこで昼まで冷やしておくか……。大学に木刀持ち込んだら、危険分子と思われちゃうかもだし。それに、そのへんが種だらけになりそうだしな~)
真剣にそう悩み始めたヴィヴィに、丸尾の堪忍袋の緒が切れた。
「……~~っ スイカ割りなんか、せんわっ!!」
「えぇ~~……。楽しいよ~、きっと」
2人のやりとりを面白そうに見ていた周りの友人達が、一斉に吹き出す。
「あははっ ヴィヴィ、天然にもほどがあるっ」
「だよな~~、丸尾。さすがに俺らもイチゴ、飽きてた」