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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

 匠海に連れて行かれたのは、地下にあるグランドバンケットフロア。

 その受付に立てられていた案内表示には、『経営法曹会議 創立50周年記念パーティー』と記されていた。

 経営法曹会議とは、経営者側と法曹界(弁護士等)の連携協力を図り、労使関係の健全正常な発展に寄与することを目的として設立された団体。

 匠海は篠宮ホールディングスのCEOである父の名代で参加し、ヴィヴィはその付添いだった。

 で、なんで18歳の小娘に似つかわしくないこんな場所に、ヴィヴィが来ているかというと――。



 6月頭、匠海と訪れた葉山の別荘。

 散々妹を可愛がって満足した匠海がその帰り、へろへろのヴィヴィに珍しく頼み事をしてきた。

『俺、これからパーティーやら会合やら、に出なきゃなんないんだけど。ヴィクトリア、良ければ付き合ってくれない?』

 兄の説明によると、将来 篠宮の家業を継ぐ匠海は、財界での顔を広げねばならないらしい。

 それ以外にも、篠宮の次期経営者として招待を受ける事も多く。

 その中でも夫婦同伴で出席を求める会合も少なくなく、匠海はどうしようかと悩んだそうだ。

『他の女性を連れて行く、という手もあるけれど……、ヴィクトリア、嫌がるだろうと思って』

『……――っ ぜ、絶対やだっ!』

 小さくそう叫んだヴィヴィの表情は、悲壮なものだった。

 実妹の自分が恋人だからと、匠海に不便を掛けるのも嫌だし。

 何よりも他の女性が “匠海の恋人” としてパーティーに同伴するなんて。

 考えただけでも、嫉妬で気が狂いそう。

『――って言うと思ったからね』

 妹の単純な思考を見透かした兄のその言葉に、ヴィヴィは大きく頷き決意を口にした。

『お兄ちゃん、言ってくれて、ありがとう。ヴィヴィ、めちゃくちゃ頑張る! 死ぬほど頑張るっ!! お兄ちゃんの役に立てるように!!!』



 かくかくしかじか、兄妹はこの場に居るのだが。

「………………」

(ヴィヴィ、タンカ切ったのはいいけど……。お、お役にたてるかな……、ここで――)

 芳名帳に記帳する兄の後ろで、バンケットフロアを覗き込んだヴィヴィは、瞳を白黒させる。

 
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