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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
『ヴィヴィ、もう18歳だし、大学生になったし……。その、何かダッドの役に立てる事、お手伝い出来る事、無いかな?』
そう申し出たヴィヴィを、グレコリーは銀座へと連れ出してデートし、ようやく娘の望む本題を口にしてくれた。
『じゃあ今度、ヴィヴィには “地域貢献活動” を手伝って貰おうかな――?』
その話初めで、父は語りだした。
『渋谷区の幡ヶ谷に、児童養護施設があるんだ。小学生~高校生までの子供達30名が、一緒に暮らしている』
『児童養護施設……?』
生まれてこの方、自分が関わって来なかったその施設名に、ヴィヴィは一瞬ぽかんとした。
(えっと……。児童福祉施設……とは、違うの……?)
『その児童養護施設には様々な理由で親元を離れて、一時的……もしくは長期的に共同生活を送っている。うちのグループの社員達が、ボランティアグループを作っていてね。定期的に訪問して、子供達と交流しているらしいんだ』
父の説明を聞きながらも、ヴィヴィはよく分からなくて。
『ヴィヴィ……、そこで、何をすればいいの……?』
『さあ?』
まさかの父の返しに、ヴィヴィは一瞬固まり、
『……え……?』
(さ、さあ……? って……?)
戸惑いを隠せない娘に苦笑したグレコリーは、その金色の頭をぽんぽんと撫でる。
『正直なところ、私も知らないんだ。なにせ “社員主導” のボランティアだからね。グループCEOの私が介入する訳にはいかない。けれど、実態も知っておきたいとは思っている』
父の役に立ちたい = 児童養護施設への訪問
その図式が成り立たずに困っていたヴィヴィは、ようやくグレコリーの言いたい事が分かり、真っ直ぐに父を見据える。
『それで……、ヴィヴィは実際にどんな感じでボランティアが行われているかを見てきて、社員さん達がどんなふうだったが、ダッドに報告すればいいの?』
なんだか、スパイみたいだな……と思ったヴィヴィに、父は苦笑してサングラスを乗せた頭を横に振った。
『そんなに堅苦しく考えなくていい。ボランティアをするつもりで、行ってくれればいいよ』
『うん……。分かった』