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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

 7月5日(月)。

 学期末試験を10日後に控えたこの日、双子の在籍するクラスは、クリスを中心に騒然としていた。

 何故かというと、話は4日前に遡る。



 円に「シケプリ、作れ!」と言われたクリスは、スケート部の先輩から過去問を手に入れた。

 そしてヴィヴィの助けを借りて、たった1晩でシケプリを完成させてしまった。

「おぉ~~っ 試験範囲をばっちり網羅し、かつ、説明が分かりやすいっ ヴィヴィもこれ見たら、良い点取れるかも!」

 出来上がりの良さを手放しで褒め称えたヴィヴィに、クリスは「ヴィヴィなら、こんなの見なくても、良い点取れるって……」と呟いたのだった。

 けれど――、



「ク~リ~ス~っ!? シケプリ、一体どこに置いてあるんよっ?」

 いつも金欠の丸尾が、血相を変えてクリスににじり寄る。

「え……? 何のこと……?」

 まるでヴィヴィの真似をする様に、こてんと可愛らしく金色の頭を傾けたクリスは、やはり無表情で。

「とぼけんな~っっ 今、クラスのみんなが必死こいて、シケプリ捜索にあたっとるぞ!?」

「ど……、どういうこと?」

 丸尾の言い分が分からないヴィヴィが、両手を彼にかざしながら「お、落ち着いて……」と制して先を促す。

「これ、見ろ、ヴィヴィ!」

『坂下門 を見よ 
 from 情報認知科学 シケ対』

『1号館のロビー ソファー下 を見よ 
 from 情報認知科学 シケ対』

『格技場の裏扉 を見よ 
 from 情報認知科学 シケ対』

 他の紙にも、同じように場所の指定がしてあった。

「……なに、これ……?」

「クリスのやつっ これを駒場キャンパス中に張りまくりやがったんだ!」

 そう言って加勢してきた三宅に、ヴィヴィは心底驚いて叫ぶ。

「えぇ~~っ!?」

 横幅 約1km 縦幅 約600mもあるこの広大なキャンパス中に、クリスはこんな紙を貼りまくり、クラスメイトを敷地中に奔走させているらしい。

「働かぬもの、食うべからず……。汗かかぬもの、シケプリ手にするべからず……」

 そう半眼で呟いたクリスは、ぞろぞろと集まってきたクラスメイトに向かって、ゆらりと立ち上がる。

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