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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

 有名な例題を挙げると、トロリー問題。

 トロリー(路面電車)が暴走している。

 自分はその先に続く線路の切り替えが可能な場所におり、このまま行くとトロリーは5名の作業員を轢き殺す。

 しかし線路を切り替えれば、もう片方の線路には1名しか作業員がおらず、1名の犠牲で済む。

 功利主義では、1名を犠牲にして5名を助けるべきという結論 “最大多数の最大幸福” となる。

 しかし、その1名が自分の親だった場合は、どうなるか?

 “親を他人の身代わりにしていいのか?”

 “このまま何も手を出さなければ、自分は5名を意図的に殺すことになる”

 そのようなモラル・ジレンマが生じてしまう。

 児玉教官は、それを発展させて『脳死した臓器提供者による、レシピエント(移植を受ける患者)の指定を、許可すべきかどうか』という仮定を学生達に討論させた。

 選択肢は次の3つ。

 レシピエントの指定を

 (1)自由に認める

 (2)親族に限り認める

 (3)一切認めない
 
 ちなみに、生体間移植では親族等への優先提供が認められている。

 挙手により選択させた児玉教官は、各選択をした生徒を指名し、その意見を述べさせた。 

 (2)に挙手したヴィヴィが教官にあてられ、渡されたマイクで次の意見を述べた。

「(1)はマフィアや金銭が絡み、生前に臓器提供の契約を交わす可能性がある。(2)は親族間へのマフィア介入の可能性は極めて低いと思われます」

「なるほど。ただ、功利主義の観点から言えば、(3)が一番良くないかな?」

 児玉教官のその追及に、

「家族に対する親愛の情は、功利主義者にとっても、“社会通念上――自分の両親を大切にする、教育をすべき” という倫理観も配慮した上での規制、が出来ると思うからです」
 
 そう答えたヴィヴィ。

「では、(3)を選択した学生で、意見のある者――。はい、そこの君」

 そこで児玉教官が指名したのが、佳苗だった。

「世の中には天涯孤独の人間もいる。(2)を選ぶと公平性が損なわれる。功利主義にも反します」

 ヴィヴィはその主張にも、すぐに納得した。

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