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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
身近な者への偏愛は、人間心理からして認めざるを得ず、また “ある程度まで” は功利主義的にも望ましいものだとして、公平性の視点から正当化したが。
確かに佳苗の言う通り、生れつき身寄りのない人間もいるという点からは、(2)では公平性に欠けるだろう。
その後、児玉教官は、
内閣府による世論調査の結果が、下記の通りであったこと。
(1) 自由に認める 26%
(2) 親族に限り認める 29%
(3) 一切認めない 33%
その他 1%
わからない 11%
厚労省の出した結論は (3) 一切認めない だったが、臓器移植法の改正で (2) 親族に限り認める が可能になったこと。
――をそれぞれ付け加え、講義は次の論点へと移って行った。
きっと佳苗が言った「浅いのよ……」は、このヴィヴィの発言に関しての事なのだろう。
( “浅い” のは、どちらだ……っ)
ヴィヴィは再度、同じ言葉を胸の中で呟く。
この学術俯瞰講義の目的――“絶対的な答えがない問題” に、日本最高峰の学力を有した学生が、様々な人種・社会的背景を持ちながら、意見を戦わせる。
悩むこと、議論すること、その “過程” が学問であるから。
自分は両親・親族共に健康で、関係も良好――そういう人間としての背景、を持ち合わせていた上での考察だった。
それをこんな講義室でもない場所で持ち出し、辱め、講義目的の大前提さえも貶す行いをするとは。
「…………もう、や……」
薄い唇から洩れる言葉は、何を指しての「嫌」なのか。
たった10分の休憩時間の終わりを告げる鐘に強引に背を押される様に、ヴィヴィはもと来た道をとぼとぼと戻り始めた。
福岡に前日入りした双子は、Fantasy on Ice 2021 in Fukuokaの会場となるマリンメッセ福岡に移動し。
アマチュアスケータ12名、プロスケーター3名、エアリアルやアクロバットの競技者に混じり、オープニングやエンディングの振り付けを受けた。
クリスは、ゲストアーティストの平居堅とのコレボレーションプログラム、の確認と通しをしていた。
このショーの特徴は “ゲストアーティスト” とのコラボレーション。