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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

 7月16日(金)から、駒場キャンパスは試験一色となった。

 みな進路が掛かっているので必死で、目の色が変わっている。

 常日頃から頑張っているヴィヴィでも、やはりその試験範囲の広さで少し手こずったりし。

 しかし17科目全てを落とさないように、何とか頑張っていた。

 7月22日(木)。

 1時限目の “法と社会” の試験を終えたクラスメイト達は、2時限目は試験が無く、空き教室にいた。

 ある者は、3時限目にある “英語二列R” の単語を今頃覚え。

 そしてヴィヴィも、3時限目の “ジェンダー論” のまとめノートを見直して、ぶつぶつ復唱していた。

「あ゛ぁ……、後、11個も試験、残ってるなんてぇ……」

 死にそうな声を上げて机に突っ伏す円に、ヴィヴィは視線をノートに残したまま、「頑張れ、としか言い様がない」と激励を述べるに留める。

「こうなったら、楽しみは夏季休暇だよね~~……。双子は夏休み、どっか行くのぉ?」

 現実逃避か “英語二列R” のテキストを放り出した円が、目の前に座るクリスの頭をつんつんと指で突く。

(あ……、そう言えば……。今年はいつから行くんだろう、英国……)

 双子の夏休みといえば、両親の故郷である英国(ロンドンとエディンバラ)に里帰りするのが、唯一の楽しみだった。

 後は、ショーやらレッスンやらに明け暮れていたら、いつの間にか新学期がスタートしているのだ。

 くるりと後ろを振り返ったクリスが、頭つんつんのお返しとばかりに、マドカのおでこにデコピンし。

 「あいたっ」と大げさに顔を顰める彼女に対し、その問いに答えた。

「ドバイ、に行く……」

「ふうん……。ドバイかぁ……。って――っ」

 自分で尋ねておきながら、かったるそうにそう返した円だったが。

「「ド……、ドバイィ~~っ!?」」

 そう叫んだ声は2人分。

 円とヴィヴィの分だった。

「な、なんで、ヴィヴィまで驚いてんの?」と円が。

「え……。だ、だって、ヴィヴィ、知らされてなかったもんっ」とヴィヴィが。

 そんな2人を涼しい顔で見やりながら、クリスが説明してくれた事によると――。

 クリスは18歳の誕生日プレゼントに、家族旅行を両親に強請ったそう。

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