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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

「お兄ちゃ~~んっ」

 その日の深夜。

 ヴィヴィは添い寝に来てくれた匠海に、速攻甘えていた。

 既に就寝準備を終えた兄の首筋に、すりすりと細い鼻を擦り付ける様は、まるで猫のよう。

 たまにぺろりと浮き出た筋を舐めれば、匠海は擽ったそうに笑う。

 それがなんだか面白くて、耳たぶを甘噛みしたり、ふ~と耳に息を吹き込んでみたり。

「こら、やめろ」

 笑い声の匠海にそう制されると余計楽しくなって、ヴィヴィは「やだ♡」と囁き、兄の腰の上に乗せられていた上半身をすりすりと擦り付ける。

「ぎゅ、して……?」

 甘ったるい声音でそう強請れば、匠海はすぐに「ぎゅ~~っ」と効果音を口にしながら、華奢な躰を抱き込んでくれた。

「ふふっ 気持ちいい」

 後頭部に添えられた大きな掌、背中を支えてくれる逞しい腕、それらが与えてくれる心地良い圧迫感に、灰色の瞳がうっとりと細められる。

 匠海はそうでもないらしいが、ヴィヴィは兄と一緒にいられるなら、別に毎回セックスしなくてもよい。

 こうやってくっついて、互いの温もりを感じあって、同じ時が過ごせればそれで。

「おにいちゃん、大好き……」

 ヴィヴィの全てがふにゃふにゃになって、無駄な力や凝り固まった思考が解されて、フラットな状態に戻り始めた頃――。

「ふ……。甘えん坊のKitty(にゃんこ)。何かあったな?」

 耳朶に吹き込まれた兄の言葉に、ヴィヴィの眉間が微かに寄った。

「………………」

「ん? 何があったのか、言ってごらん」

 まさに猫撫で声でそう促す匠海に、ヴィヴィはふるふると首を横に振ったが、抱擁を緩めた兄に覗き込まれ、困った様に瞳を泳がせた。

「ヴィクトリア。俺には甘えていいんだよ?」

 白い頬を指先で撫でながらそうそそのかす匠海に、ヴィヴィは眉をハの字にする。

「っていうか、ヴィクトリアは、俺にしか甘えられないだろう?」

 次いで発せられた兄の言葉に、ヴィヴィは「確かに……」と心の中で同意する。

 生まれてこの方、ヴィヴィは目の前の匠海に甘やかされ、時に厳しく躾けられ育てられてきた。

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