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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

「ははっ 確かにな。さあ、難しいこと考えてないで、とっととおやすみ、ヴィクトリア。明日も試験だろう?」

 腰の上に跨らせていたヴィヴィのおでこに、そっと唇を押し付けた匠海は、妹をベッドに横たえさせた。

「ん……。おやすみなさい……」

 そうだ、明日に備えて早く寝なければ。

 3教科・7個の試験がまだ残っている。

 就寝挨拶を述べたヴィヴィの頭を撫でた匠海は、

「おやすみ。いい夢を」

 そう囁き、ベッドから離れて寝室を出て行こうとする。

 しかし、扉の前で立ち止まった匠海は、ゆっくりとこちらを振り向き、少しの躊躇の後に発した。

「………………、けれど……、そうだな……」

「………………?」

 羽枕の上の頭を不思議そうに持ち上げるヴィヴィに、匠海は視線を合わせると言葉を選ぶ様に慎重に口にした。

「ヴィクトリアは、その “嫌いになりそうな人”……? について、良く知っているのか?」

「え……?」

「苦手意識のある相手の事は、その側面しか見えなくなりがち……。そう思わないか?」

「………………」

 兄のその言葉は、押しつけがましくもなく、あくまでもサラリとしていて。

「じゃあ、おやすみ。ヴィクトリア」

 慈悲深い微笑みと共にそう囁いて寝室を後にした匠海の背を、ヴィヴィは擦れた声で追った。

「……おやすみ、なさい……」

 扉が閉じられ、ヴィヴィは上げていた頭を枕の上にぽすんと落とす。

 先ほど兄に言われた言葉が、ヴィヴィの胸の中に残っていた。

(そっか……、ヴィヴィ……、あの人達の事……、何一つ知らない……)

 上級生ということ、偶然知ったリーダー格の宮崎佳苗の名前くらいしか。

 しかし、そう思った直後、

「……~~っ」

(だからって、こっちから積極的に知ろうとも、思わないけどね……っ)

 なにせ、自分は阿呆みたいに忙しいのだ。

 そんな時間があったら、まだ取り掛かれていない母への親孝行に費やしたい。

 結局、そう結論付けてしまうのが、ヴィヴィという人間なのだった。





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