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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
7月27日(火)。
一晩経って起床したヴィヴィは、何だか身体も心も軽くなっている自分に気付いた。
きっと昨夜、兄に自分のもやもやを共有して貰えたから。
そして “どんなヴィヴィも、ヴィヴィ” と受け止めてくれたから。
「………………」
(ヴィヴィ……、どんだけ幸せ者、なんだろ……)
最愛の人は、兄にも保護者にも恋人にもなって、駄目ダメな自分を包み込み、その背中を押してくれる。
起き抜けの白い顔が、にへらっと締まり無く緩む。
「…………、今日も一日、がんばろっと!」
早朝5時。
キングサイズの白ベッドから跳ね起きたヴィヴィは、ルームシューズを引っ掛けて寝室を出ると、小走りでリビングを横切り。
「Good Morning、My Fishs!!」
べたっと巨大水槽に張り付いたヴィヴィは、今日も色とりどりで美しい海水魚達に、そう楽し気に挨拶したのだった。
意気揚々とクリスとリンクへ向かう車内。
ヴィヴィは本日の試験科目、中国語一列① と 情報 の、纏めノートを読み込み。
朝練でも昨夜と変化無しのルッツとフリップに凹みながらも、大学へと向かったのだった。
その日の夕方、ディナーを採った双子は、いつも通りリンクへと向かうベンツの中にいた。
屋敷で結構 勉強が出来たし、明日の試験は1コマだけなので、ヴィヴィは久しぶりにiPadを取り出し、昨日の自分のレッスンの様子を見直す事にした。
試験期間に入ってから今日で12日目。
その間、ヴィヴィはいつもなら自分の滑りを確認する移動時間も、勉強に充てていた。
久しぶりにじっくりと見入った自分のジャンプに、ヴィヴィは心の中で首を捻る。
(あれ……? なんか……、踏み切り、遠い……?)
昨日転びまくったジャンプの動画を何度も繰り返して見直し、そしてiPadに保存されていた2週間前の動画も立ち上げ、それと見比べてみる。
「……やっぱり……」
思わずそう呟いたヴィヴィに、隣のクリスがちらりと視線を寄越したが、それどころでは無かった。