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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

 8月1日(日)。

 リンクから屋敷へと戻った頃には、もう外気温は30度を超えていた。

 軽くシャワーを浴びた双子は、偶然各々の私室から廊下へと出たところでかち合い、一緒に階下の防音室へと向かった。

「…………? あれ……、クリス、おデートは?」

 大理石の階段を軽やかな足取りで降りるヴィヴィは、2段先を降りているクリスの金色の後頭部を見下ろしながら、そう尋ねる。

 土曜の昨日はクラスの皆と海水浴だったし、日曜の今日はこの通り――クリスは早朝からずっと、ヴィヴィと行動を共にしている。

(大きなお世話だろうけれど、“花梨ちゃん” 寂しがってない?)

「ん……。今週は、いいや……」

 振り返る事も無く、そう返事を寄越したクリス。

 7月1日から、お茶の水女子大の2年生と交際をスタートした双子の兄。

(あれ……? 今日は8月1日、でしょ? そう言えば、もう1ヶ月、経ったんだ……)

「クリス! 凄いすごいっ 花梨ちゃんと “4週以上” 続いてる!」

 中々、ガールフレンドと長続きしない彼の4人目の彼女とは、4週間交際が続けば儲けモノ――。

 そう友人達から面白がられていたが、とうとうその記録を破った事になる。

「……そう、なるのか、な……?」

 今頃気付いた……といった風に、首を傾けるクリスに、ヴィヴィは苦笑した。

「ま……、夏休みは平日も休日も、関係ないもんね~? 花梨ちゃんとも、おデートし放題、かぁ~~♡」

 そんな能天気な事を言いながらも、ヴィヴィのこの夏のスケジュールはびっちり埋まっていた。

 教習所、スケートのレッスン、アイスショーの出演、ロシア語の勉強、父の手伝い、母の手伝い、匠海の会合等への付添い。

(それにヴィヴィ、夏休み中に、沢山本読むんだもんっ! 目指すは1日1冊!!)

 大学で履修している心理学と国際関係論、その辺りからこの夏は、速読を駆使して貪り読む予定だ。

 そして勿論、匠海との逢瀬も――。

 クリスからは見えないところで、にやっと締まりのない笑みを浮かべるヴィヴィなのであった。

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