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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

「ん……。俺は、準備出来たよ」

 そう伝えてきた匠海に、ヴィヴィは頷き、クリスはトランペットを置いて兄の脇に立つ。

 静かに左肩にヴァイオリンを構えたヴィヴィは、ひとつ深呼吸をすると、匠海を見つめながら弓を下す。

 ヴァイオリンが静かに12の時を刻む中、ピアノはppでアルペッジョ(和音を同時でなく、下から順にずらして弾く)で柔らかな音を重ねていく。

 4分の3拍子。

 8つの和音をピアノが静かに鳴らせるのに被せ、ヴァイオリンから開放弦独特の「クレイジー」な和音が鳴り響く。

 この下品なまでに良く通る響きと甲高さこそ、“死神のヴァイオリン” に相応しい。
 
 そして、その歌詞はもっと「クレイジー」だ。



 Zig,Zig,Zig――ジグ、ジグ、ジグ

 暗闇の中の 死の舞踏

 踵で蹴って 墓を打つ

 死神は踊る、真夜中に


 どいつも、こいつも、あいつも、そいつも、

 ヴァイオリンの調べに踊るのだ


 暗闇には 冬の風 

 菩提樹からは 呻き声 

 闇を縫い 横切る白骸(しろむくろ)

 死装束で飛び跳ね 走り回る。


 ジグ、ジグ、ジグ 

 死の拍子 

 ヴァイオリンは 

 ギコ、ギコ、ギコ

 ガチガチ鳴るは 踊る骨音


 苔に腰かけるは 色好みの2人

 人生のやわらかな甘い菓子を

 再び味わおうと するかのように


 ジグ、ジグ、ジグ

 死神は絶え間なく

 あの胸を刺す ヴァイオリンをかき鳴らす


 暗闇の中の 死の舞踏 

 死装束が吹き飛べば 

 素っ裸の 死の舞踏 

 骸の恋人 いっそう固く結びつく


 骸の女は 貴族の奥方

 夫の胸に抱かれたつもりが

 実はうだつの上がらぬ 下品な大工 

 骸になれば誰が誰やら 見分けもつかぬ


 ジグ ジグ ジグ

 死の舞踏 

 どいつも、こいつも、あいつも、そいつも、

 サラバンドに乗せて 輪になり踊る 


 ほら、ご覧あれ 

 王も乞食も 手に手を取って

 一緒になって 跳ね踊る


 だが 闇も束の間

 雄鶏の鳴き声と共に 朝が来る 


 踊りを止めた骸達

 押し合いへしあい

 あっという間に 逃げ去った


 亡者達の 美しき闇よ 

 悲哀多き この世のため

 死と平等に 祝福あれ――!

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