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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
幾度も楽器間で主題の受け渡しをする円舞曲は、軽やかに跳ねていたかと思えば、地を這うような重苦しさを持ち。
楽し気に響いていたかと思えば、涙に暮れる様な切なさを訴える。
盛り上がっていく骸骨の踊りが最高潮に達した途端、急に静寂は訪れ。
ヴァイオリンが奏でるのは、朝を告げる雄鶏の鳴き声。
そしておどろおどろしく連なる、ピアノの和音。
夜の終わりを哀しむ悲壮な “死神のヴァイオリン” の音色で、踊り狂っていた骸骨達は、足取り重くそれぞれの墓場へと帰り。
そして静かな和音で、曲は終了する。
「初見にしては、良い出来……」
ぼそりとそう褒めてくれたクリスに、7分の曲を弾ききった兄と妹は、互いに見合ってにやっと嗤った。
「おもしろ~いっ お兄ちゃん、また今度、付き合って?」
ヴァイオリンと弓を握りながら、嬉しそうに匠海に強請るヴィヴィに、兄も「今度は、完璧に弾いてやる」と少し悔しそうな表情を浮かべ、頷いてくれた。
「っていうか、この曲。チェロ & ピアノでも、いけるんじゃないかな?」
甲高いヴァイオリンは勿論素敵だが、渋いチェロの音色でもきっと良い感じになりそう。
そう思ってヴィヴィは発したが、クリスは「う~~ん……」と唸り、思案顔で口を開いた。
「やっぱり、“死神のヴァイオリン” だから……。僕は、ヴァイオリン版が、一番好き……」
1時間半、楽器を触った双子は、匠海と別れた。
二子玉川の教習所で、頭と身体でMT車と触れ合い。
遅めのディナーを家族で囲んだ後、ヴィヴィは書斎で本の虫となった。
(こんなに好きなだけ本が読めるなんて、幸せ……♡)
なんて呑気な事を思っていたら、時刻は日付が変わる寸前だった。
急いで湯を使ったヴィヴィは、朝比奈に就寝挨拶をし、匠海の寝室へと向かったのだが――。
「なんで……っ “恋人の俺” がまだ水着姿、見てないのに……、他の野郎が、先に見てるんだっ!?」
早々に妹を組み敷いた匠海は、キツク締まるそこを苛めながら、言葉でもヴィヴィを追い詰める。