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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第5章
大きな灰色の瞳を輝かせ、ヴィヴィは歓喜の声を出して喜んだ。
その声を耳にし、総勢20名のクラスメイト達が「何事?」という表情で、ヴィヴィ達を振り返る。
「講堂前に七夕の短冊、飾れるんだってっ! みんな行こうっ?」
来年は高校生にもなろうという少年少女達が、短冊ごときにそんなに興味があるとは思えないが。
そこはヴィヴィの凄いところ。
彼女が弾けた天真爛漫な笑顔を振りまけば、周りの皆に「ヴィヴィに付いて行けば、何か楽しいことが起こるかも?」と思わせてしまうのだ。
「へ~、知らなかった」
「何年振りだ? 七夕なんて」
「私、『ダイエットがうまくいきますように!』って書いちゃう!」
「え、無理じゃね?」
「あ、可愛いペン持ってこうよ~」
皆口々にはやし立て、ガタガタと椅子を引いて席を立つ。
昼休みの残り時間を利用して、ぞろぞろと中等部の隣の講堂へ向かうと、
そこには2.5m程の笹が、ラウンジの真ん中に鎮座していた。
その前には、色とりどりの和紙で作られた短冊まで、置かれている。
「わ~、七夕っぽいっ!」
ヴィヴィは小走りで笹に近づき、既に飾られている短冊の願い事を、何枚か読んで振り向くと。
ラウンジのソファーにはクラスメイトがそれぞれ陣取り、
ある者は嬉々として、ある者はうんうん唸りながら、短冊に願い事をしたためている光景が広がっていた。
(うふふ、今年は1人じゃなくて、みんなと七夕だ!)
にんまりしたヴィヴィは短冊を1つ手に取ると、カレンから水色のペンを借りて、さらさらと迷いなくお願い事を書く。
あまりに嬉しそうなその様子に、カレンが「なに書いたの?」と尋ねてきたが、
ヴィヴィは「秘密!」っと舌を出し、笹のなるべく高い位置に “こより” で短冊を吊るした。
皆の願い事を覗いてやろうと、いくつかのグループにちょっかいを出していたヴィヴィだったが、
初等部の校舎から管弦楽の音が聞こえてくるのを耳にし、窓際に近付いていく。
ゆったりした優しい曲調のそれは、どこかで聞いたことがあった。
「……ん~と……」
(何だったかな……?)
「When you wish upon a star ―星に願いを―」
助け舟を出す様に、クリスがその曲名を教えてくれる。