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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第27章
背中を押されて自室へと戻されたヴィヴィの背中の後ろで、パタンと扉が閉められる。
「………………」
しんと静まり返ったヴィヴィの私室の隅で、その主人は立ち尽くした。
(……何しに行ったんだろう……私……?)
ヴィヴィは視線を落としてじっと自分の手のひらを見つめた。数分ほどぼんやりとそうしていたヴィヴィだったが、ふっと顔を上げる。
「ま、いっか……。メダルは渡せたんだし……」
ヴィヴィが何故急に匠海にメダルをプレゼントしようと思ったかというと、昔、国体に優勝した匠海がヴィヴィにそのメダルをくれて、それがとても嬉しかったからだ。
(喜んでくれたし…………それに……願いも叶えてくれるって言ってくれた――)
ヴィヴィの表情がふと解れる。けれどそれも一瞬のことで、ヴィヴィはギュッと手のひらを握りしめて心を新たにする。
「絶対……ぜっっったい! オリンピックで優勝するっ――!!!」
そう独白してすっきりしたヴィヴィは、気持ちも楽になりさっさと髪を乾かそうとバスルームへと軽い足取りで向かっていった。