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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

 8月4日(水) : 昼・夜公演

 8月5日(木) : 昼公演

 大阪公演のスケジュールは、上記の通り。

 初日の早朝、ヴィヴィは双子プログラムのリハーサルの為、一番乗りで会場にいた。

 その手に握られているのは、愛用のヴァイオリン。

「ヴィヴィちゃん、音、ちょうだい?」

 会場設営者に求められて適当に和音を出し、楽器に取り付けられた小型マイクの響きを調整していく。

 それが終われば、クリスを含めての通しを、照明の当て方、音楽のタイミング等を確認しながら行った。

 他のメンバーが揃い始めた頃、各々のエキシビのリハも行い、皆が万全の状態で初日の昼公演を迎える事となった。

 オープニングに現れたのは、今年はやりのメタリックな衣装を纏った、総勢20名のスケーター。

 浅田が美しいスパイラルで観客(とヴィヴィ)を魅了した後、皆が彼女を囲み、これから始まる楽しい宴への期待を高めていく。

 第一部はオープニングに始まり、4名のエキシビの後、アンコール。

 また4組のエキシビの後、女子グループのグループナンバー。

 そして、第一部のトリを務めたのは、篠宮兄妹による 双子プログラム――。

 完全なる闇が下りたリンクに、ポーンポーンと、ハープの静かな音色が響き始める。

 それは深夜12時を知らせる鐘――死者の時間の始まりを予告する。

 そんな中、徐々にスポットライトで照らされていくのは、黒マントのフードを頭から被り、白い腕にだらりとヴァイオリンを持つ、死神の姿。

 場内の空気が騒然とするのを感じつつ、ヴィヴィは血の様に紅いマントの裏地を覗かせながら、うっそりとヴァイオリンを左肩に構え、右手の弓を振り下ろす。

 小型マイクを通して場内に響き渡るのは、開放弦で奏でられる気の狂った様な不協和音。

 たった8小節の音色で強烈な印象を植え付ける “死神のヴァイオリン” は、その音色と共にスポットライトが絞られ。

 代わりに暗闇に浮かび上がったのは、離れたところに寝そべるクリスと、白骸(しろむくろ)――等身大の骸骨の骨を繋ぎ合せたそれ。

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