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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
「どうした、ヴィヴィ? 珍しく、難しい顔して」
休憩中、誰とも戯れずに考え込んでいたヴィヴィに、羽生がそう声を掛けて来てくれる。
(珍しく……?)
そんなところに若干引っ掛かりながらも、ヴィヴィは「ん~~……」と唸る。
「えっと……。生意気な事、を、言います……」
そんな断りを入れながらも、何となく羽生なら受け止めてくれるような気がしていた。
「……? どうぞ?」
「ヴィヴィ、来期のオリンピックの団体戦で、金……は行かなくても、銀メダル、獲りたいなぁ……て」
3年前 平昌五輪で、日本としては初めての団体戦を経験し、羽生をリーダーとしたチームは、銅メダルを獲得した。
初出場で銅メダルは、とても素晴らしい快挙なのだが。
ヴィヴィはもっと上を目指せるのではないか、と思っている。
日本チームは本当に皆 仲が良く団結力があるし、アイスダンスとペアも、世界で上位グループに喰い込むほど力がある。
ヴィヴィの言葉に、羽生は瞳を真ん丸に見開き。
そして細長い首を巡らし、誰かを探し出した。
「…………?」
不思議そうにヴィヴィが見守る中、羽生は宮平とクリスを呼び、手招きした。
「どうしたの?」
「なんでしょう……?」
双子と宮平を前に、羽生はおもむろに口を開いた。
「今、ヴィヴィから「五輪の団体で銅より良い色のメダルが撮りたい」って意見があった」
「……あ、うん……」と、少し驚いた表情の宮平。
「僕も……」と、同意するクリス。
羽生はヴィヴィに向き直ると、ふっとアンニュイな笑みを浮かべる。
「実は、前から知子(さとこ)と話してたんだ。「次回の五輪では、絶対に銀メダル狙うぞ」ってね」
「「え……?」」
驚く双子に、羽生と宮平はにっと笑う。
「だから、ヴィヴィがそう言って来てくれたって、今、知って……。私、凄く嬉しかった」
「俺も」
宮平の言葉に同意する羽生。
「知子ちゃん……。結弦君……」
一緒に団体戦を経験した先輩2人が、同じ強い気持ちを持ってくれていた事に、ヴィヴィの薄い胸がじんと熱くなった。
※本作では、ソチ五輪での団体戦出場は叶わなかった、という前提で書いています――あしからず。